妊娠で収入がストップ...財政危機の始まり


「まずは妊娠直後、酷い悪阻になり仕事ができなくなりました。事務所に所属はしていましたが私はフリーランスなので、仕事をしなければ収入はなくなります。でも当然ながら、日常の費用は変わらずかかります。妊婦の通院費だって馬鹿にならなかった」

このときから彩乃さんは、貯金を切り崩して生活するようになりました。一般的な企業と違い、「体調が回復したから仕事に戻る」ことがなかなか難しい芸能界。定期的にもらっていた仕事のいくつかはそのまま降板となってしまい、妊娠中に彩乃さんの収入は半分以下になりました。

「でもこのときも、まだ焦ってはいませんでした。貯金はまだ数百万円あったし、収入がないと言っても、もちろん衣食住に困ることはありません。初めての出産で娘の誕生が楽しみでもあり、ベビーカーや電動ゆりかご、お洋服などの赤ちゃんグッズを自分のお財布からたくさん買っていました。貯金が減っていく自覚もさほどなく、『出産後にまた働けばいい』と漠然と思っていたんです」

後から思えば、この頃から彩乃さんの財政危機は始まっていたそう。収入がなくなってしまったのにも関わらず、生活水準は変えないまま、むしろ出産前後で出費が増えていました。フリーランスのため、産休手当などももちろんありません。

 

「あれ、お金がない。とようやく焦り始めたのは、長女を出産して数ヵ月経った頃です。収入がないのに、食費等の生活費やママ友との交際費、赤ちゃんグッズ、シッターさん代など合わせて毎月50万円ほど使っていたので、一気に預金残高が減ってしまったんです」

焦った彩乃さんは、若い頃に購入したりプレゼントされたブランドバッグやジュエリーを売ってその場を凌ぎました。出産後、もう派手なジュエリーや重い革のバッグを使う機会も減るだろうとほとんど売ってしまったそうですが、近年ハイブランドの値上げが話題になる中、少し後悔があるそうです。

 

「主人は私がお金がないと騒ぐと、『大変だねえ』と温和に返すような人。一応、娘にかかったお金はリストにして請求すれば振り込んでくれるし、本当に大変なときは『救済金』もくれました。でも、それでも無収入の私のお金は減っていく一方でした。

ママ友との付き合いも子育ての上では重要だと思いますが、お茶やランチに2~3000円、娘を寝かしつけてカフェで一息つくのも1000円……と塵が積もって、無駄使いしなくても、都心では生きているだけで毎月それなりの額がかかるからです」

その後、彩乃さんは娘さんを保育園に預けて仕事復帰を試みます。けれどやはり厳しい芸能界。産後はレギュラーの仕事ももらいにくく、単発の仕事をいくつか引き受けたものの、月に7~8万円ほどの収入だったそう。

「過去のブランド品を売り、定期預金も解約して、0歳の娘も育てて……。ふと、私って、どうして資産家のお坊ちゃんと結婚して、こんな高級地の豪華な家に住みながら余裕がないんだろう。どうしてこんなにお金がなくていつも不安なんだろうと、心底疑問になって。夫から十分なお金をもらえないのは普通のことなのか、友人何人かに相談してみることにしました……」

表面的にはセレブ妻と見られていながら、「実はお金がない」ことを人には言えず、初めて告白したという彩乃さん。

結婚費用、婚約指輪、自家用車、家などの大きな出費となるとご主人の家族から多大な援助があるそうで、あくまで表向きは非常に裕福な家庭、けれど日常生活においての出費はほとんど自分で管理しなければならない……とは、とても興味深く複雑なお話でした。

彩乃さんが一般企業の正社員であれば少し状況は違っていたのかもしれませんが、フリーランスは産休育休手当がもらえないことも痛ましく感じます。

来週公開の後編では、夫婦の話し合いの末に判明した、ご主人がこれまで彩乃さんに生活費を渡さなかった驚きの理由、そして夫婦の折衷案について詳しくお話いただきます。

写真/Shutterstock
取材・構成・文/山本理沙

 

 

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