キラキラと輝いて見えるアイドルの舞台。だけど、光には必ず影がつき従うように、その煌びやかな舞台の裏には計り知れない大きな闇があるのかもしれません。今回紹介する『私のアリカ』は、そんな光と影のはざまで友のため、夢のため、そして“推し”のために争い、翻弄されていく……各々の戦いを描く作品です。

『私のアリカ』(1) (ヤンマガKCスペシャル)


全ての始まりは、人気アイドルの失踪事件


今をときめくアイドルグループ「りりかるトリック」。“りりトリ”の愛称で親しまれ、徐々に人気と知名度を獲得していくなかでとある事件が起こります。それが、人気メンバー・真宮アリカの失踪事件。

 

当初は熱狂的なファンによる犯行かと思われたものの、結局解決の糸口につながる情報は何一つ見つからないまま1年が経過してしまいます。グループ内はもちろん、ファンの間でも不穏な空気が漂うなか、なんとりりトリは新メンバーオーディションを開催することに。

新メンバーオーディションの最終候補生として6人の少女たちがお披露目されますが、良くも悪くも一際注目を集める少女がいました。それが宮嶋ナナ。

 

整った顔立ちに金色の髪という目をひくビジュアルもさることながら、アイドル志望とは思えないほどの無愛想っぷり。さらに、憧れるアイドルとして失踪した真宮アリカの名を出すナナ。そんな彼女の登場に、最終候補生はもちろん、現メンバーたちの間には殺伐とした雰囲気が流れます。

 


真相を追い求める一人の少女


このナナという少女。実は、アリカとは同郷の親友なのです。アリカの親友であり、そして何よりもアイドル・真宮アリカの一番のファンであるナナ。アリカの失踪事件はファンではなく運営側に何か秘密があるとにらんだ彼女は、グループに潜入するために新メンバーオーディションに参加したのです。

 

事件の真相を追い求めてアイドルを目指すナナ。けれど、新メンバーオーディションで正式メンバーに選ばれるのは決して容易なことではありません。

ダンスや歌唱経験ゼロからアイドルを目指すことの難しさ。そして、実技だけではなく、炎上のリスクを抱えながらもSNSでの自己発信やアピールが求められること。ナナはオーディションに参加していくうちにアイドルの過酷さ、そしてアリカが人知れずに抱えていたであろう闇の部分を垣間見ていくことになります。

 


友情、夢、忠誠……それぞれが抱く思惑と感情


そして、アイドルの過酷さはそれだけではありません。時には同じ候補生からの妨害行為に遭ったり、“推し”への忠誠心を示すかのように暴徒化するファンの存在……。そんな自分起因ではないところで巻き起こるアイドルの闇に呑まれそうになるナナですが、果たして彼女はここからどう逆転していくのでしょうか。

 

友情を胸にアイドルを志すナナ。一方で、アイドルを夢見て自分の全てを懸けて戦う少女たち。そんな少女たちを“推し”として全力で応援するファンたち……。アイドルという存在を軸に、さまざまな思惑と感情が蠢く『私のアリカ』。

どの立場の感情も決して否定することができない。それほど、鬼気迫るような熱狂に満ちたそれぞれのキャラクターたちから目が離せません。

さらに、第一話のタイトルは「少女A」、第二話は「愛の軍団」、第三話は「ガールズルール」。アイドルがお好きな方ならもうピンと来ているかもしれませんが、各話のタイトルに秘められた仕掛けにも注目してみてください。

 

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<作品紹介>
『私のアリカ』
藤沢 もやし (原著), 隈屑。 (著)

アイドルグループ『りりかるトリック』の人気メンバー・真宮アリカが、ある日突然失踪した。1年経っても解決の糸口が見えない中、”りりトリ”はグループの盛り上がりのため第3期メンバー・オーディションの開催を発表。その候補生の中で、一人異彩を放つ金髪の宮嶋ナナ、実は彼女は事件の謎を探るために潜り込んだアリカの親友だったーー。『御手洗家、炎上する』の藤沢もやしと、ちばてつや賞大賞の新鋭でお送りする”アイドル”の光と闇に迫る芸能界サスペンス!


<作者プロフィール>
原作:藤沢もやし

漫画家。2015年に「ハツキス」(講談社)にて『ファムファタルと昼食を』でデビュー。代表作に『17歳の塔』『御手洗家、炎上する』など。2022年12月より「週刊ヤングマガジン」(講談社)にて『私のアリカ』を連載し、原作を務めている。

作画:隈屑。
漫画家。2022年に読切り『天使のラブソング』で第86回「ちばてつや賞」大賞を受賞。同年12月より「週刊ヤングマガジン」(講談社)にて、『私のアリカ』を連載し、作画を務めている。