不妊治療中の妻の、驚きの裏の顔


「たまたま社会復帰をして、仕事に慣れて本当に良かったとは思いますが、同時に10年のブランクが惜しくなりました。『女は27歳の最高値で結婚!』って、本当に何だったの……? って気分で。何なら最近は、経済力のある女性の方がモテるし結婚しやすいとも聞いて、本当にびっくりすることだらけ。すっかり世間知らずなおばさんになってました」

静香さんの心境を聞いていると、どうしても所々で共感してしまいます。「若いうちに結婚すべき」「結婚しても経済的自立すべき」……など、世間には今も昔も様々な意見が溢れていて、矛盾が起きていることも多々。

しかしそもそも結婚や出産、仕事の有無に正解というものはなく、自分自身がしっかりと考えて選択し、本人が良ければ、それに良し悪しはないはず。けれど人は、やはり環境や他人に影響されたり比べてしまったりして、自分らしい正解を見つけるのはなかなか難しいのだと思います。

「仕事は楽しかったけど、正社員で長くキャリアを築いてきた人たちと肩を並べるのは、やっぱり私には無理だ、と思って。ならせめて、やっぱりもう1人子どもを産むべきなのかなと考え始めました。母と夫にも『中途半端な仕事より2人目だ』と何度も言われてたし、娘も赤ちゃんを欲しがっていたので……」 

 

娘さんを育て、長い専業主婦から社会復帰を果たしたのは素晴らしいことで、それで十分だと個人的に思います。

しかし幼少期からご両親に熱心に育てられ、いわば常に一定の合格点を取り続けていた静香さんは、子どもが1人であること、キャリアにブランクがあることに自分で合格点を出せなかったよう。

 

というのも、社会に出てみると、2人の子持ちでバリバリ働いている女性も沢山いたり、母親や夫からのプレッシャーもあったから。前回のお話で「受験も結婚も出産もチェックリストみたいだった」と仰っていた静香さんですが、ご自身でもそのリストを増やしてしまい、それを埋めなければならないと自分で自分を追い詰めてしまいがちなようです。

「心を無にして夫と自然妊娠を数回トライしましたができなくて、不妊治療をしたいと言うと夫もホッした顔をしたので、最初から言えば良かったと思いました。夫婦なのにお互い本音を言えないって不思議ですよね」

しかしもっと不思議なのは、この不妊治療の間、おそらく夫婦共に婚外パートナーがいたこと。夫婦間でほぼ関心はないのに、2人目を作るという意思は一致していたというのは本当に不思議です。

「いや本当に、変ですよね。年下の彼とはしっかり避妊しながら、不妊治療してるんですから……。夫も遊んでるか付き合ってる女の子がいたはずですけど、どんな気分だったんでしょう。……私は割り切ってたので、特に何も。独身の頃はこんな不良妻になるなんて想像もしなかったですが、でも結婚生活なんて、蓋を開けると意外と何でもアリじゃないですか」

ちなみご主人は、子育てと家事に支障がなければ仕事は好きにしてもらっていい、というスタンスだったそう。

ただ、もう長い間「家で一緒に食事をとる」「夫婦2人の時間を作る」ということはほとんどありませんでした。とはいえ家族関係が悪いということもなく、特に娘さんの前では夫婦円満。月に数回は家族で出かけたり、年に1、2度は旅行に行くこともあったそうですが、基本的に毎日の帰宅は深夜、週末もゴルフで留守が多い……という、まさに仮面夫婦だったようです。