「女風」で得られたもの


「とうとう部屋のチャイムが鳴り、やってきたのはとても感じの良い男性でした。外見もなかなか良くて、人当たりが良い。まあ、プロなんですよね。普通に素敵な男性が、いわばお姫さま扱いをしてくれるんですけど、印象的だったのは、まずは丁寧にカウンセリングをされること」

カウンセリングの内容は、サービスの流れやNG行為、性癖について。プライベートではこんな意思確認をしてからベッドに入ることはないだろうから、興味のあることは遠慮なく教えて欲しいと言われたそうです。

「これまでオーガズムを感じた経験があるか、SMやおもちゃに興味はあるか……など、淡々と質問されシートに記入されていきました。女友達が『エステの延長』と例えた意味が少しわかります。カウンセリングが終わるといよいよセラピーが始まり、私の緊張もピークになりましたが、まずは普通のアロママッサージから入り……ちょっとリラックスできてきたな、と思ったら、そこからはもうあっという間でした」

 

時間になると、最後は一緒にシャワーを浴び、サービスは終了。セラピストの男性は最後まで紳士に振る舞い、部屋から退出すると間もなくお礼のLINEが鳴ったそう。

 

「感想はかなり個人差があると思いますが……正直私は、特に初回は事前に聞いていたような快感はほとんど得られませんでした。相手はプロなので、技術があるのはわかります。刺激で身体はそれなりに反応しても、でも心がついていかないというか。本当にエステの延長という感じです。こちらは相手に奉仕したり演技をする必要もなく、ただサービスを受ける。ですが、久しぶりに男の人に丁寧に触れられたことで、長年思い詰めていた不安はかなり解消されました。

もちろん、女風に本番はないので本物のセックスとは違います。でもセラピストはプロで、久しぶりに女として扱われた充実感はありました。セックスと美容の関連付けはしたくないけど、たしかに肌の調子が良いような気もしたし、『一生できないかもしれない』『女として終わってる』という焦りが薄れ精神的に余裕がでたせいか、女性らしさみたいなものも取り戻せた感覚があって。お金さえ払えばいつでもサービスが受けられるというのは、私にとっては安心材料です」

弥生さんは単純に性欲解消や快楽のためでなく、やはり一貫して「不安解消」を求めて女風を使い、そして満足できる結果を得たと言えるようです。

ちなみにセラピストの男性からは、定期的にLINEが送られてくるそう。営業であることはもちろんわかっていつつも、そんなケアを含め「プロのサービス」として弥生さんは甘んじて受けていると言います。その後は2、3ヵ月に1度ほどのペースで女風を利用しており、営業のLINEに応えてみたり、心の状態があまりよくないときの気分転換として使っているそう。

「もちろん、家族には細心の注意を払って秘密にしています。当然ながら息子には絶対に知られたくないし、夫が知ったら悲しませてしまうかもしれない。でも……結局セックスは相手ありき。女風を使うことで、夫に期待したり、プレッシャーをかけることがなくなったのも大きな収穫です。お互いに気を使ったり、ギクシャクすることも減りました。だから、私は女風を使って良かったと思っています」

複雑ではありますが、夫を頼らずに女風を使うことは、弥生さんなりの夫への思いやりとも言えるのでしょうか。

ちなみに、弥生さんは女風を何度か使っても、単純にその時間を楽しんだり、快感に没頭した経験はまだないそう。おそらく、ご自身が積極的にそうしたものを求めていないのかもしれません。あくまで女性として性的に扱われることが、弥生さんにとって必要だったということがお話を聞いているとよくわかります。

「もしも私と同じような悩みで苦しんでいる人がいたら、おすすめする……とまでは言えませんが、最終手段の一つとして、今は女風という存在があることを知っていてもいいんじゃないかと思います。お金を払えば誰でも使えるエステ、もっと言えば保険みたいなものとして頭の隅に置いておいてもいいかも」

前編の冒頭で書いた通り、女性用風俗を使う目的は実に様々だと聞きますが、弥生さんのような心境の女性は少なくないだろうと感じました。実際、弥生さんは「私のような女性はきっと多いと思う」という理由で取材に応じ、胸の内を明かしてくれました。

夫婦関係だけでなく、人は誰しも様々な悩みを抱えていると思います。どんな手段や選択であれ、その人なりの意思を持ち問題解決への行動を起こすことで何かしらの変化が起き、きっと良い方向に向かうと信じています。
 

写真/Shutterstock
取材・文・構成/山本理沙
 

 

 

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