ミドルエイジが直面する介護やお金の問題について、知っていると安心する制度やポイントを噛み砕いてお伝えするこちらの連載。介護の専門家でFP資格を持つ渋澤和世さんが、皆さんのお悩みにお答えします。今回は、増え続けるタンス預金についてのお話です。

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日本国民のタンス預金は1人当たり86.6万円


日本人は何かと現金を貯め込みがち、と言われますが、それは銀行の預金に限ったことではありません。日本銀行が発表した資金循環統計によると、2023年3月末時点でのタンス預金、つまり自宅などに保管されている現金は、106兆8530億円にものぼります。

高齢者を中心にタンス貯金は増え続けていますが、今回の相談者・晴子さんも、親からその存在を知らされて、驚愕すると共に不安が押し寄せてきたそう。話を聞いてみましょう。

親が実家に2000万円を貯め込んでいたことが発覚!


先日、母から「お姉ちゃんと一緒に、近いうちにこっちに来てくれるかしら」と暗く沈んだ声で電話がかかってきました。母は昔から心配性なので、そんな声を出されても特段驚きはしませんでしたが、話を聞くと、1ヵ月ほど前に右手首を骨折して弱っているというのです。

死に至るわけでもあるまいし……とタカを括って聞いていましたが、どうやら母は今回の骨折がかなりショックだった様子です。身体の衰えを感じたのか、今後の生活について一度話をしたいから、とにかく山梨の実家まで来るようにと言われました。私も姉も都内在住で、離れて暮らす親の老後についてはいつか話をしなければと思っていたので、良い機会だということで集まったのです。

実家に帰ると、父が神妙な面持ちで「自分たちも75歳で後期高齢者の仲間入りをした。いつまでも元気なつもりでいたけれど、年齢的にはいつ病気になってもおかしくない。だから最悪介護状態になっても慌てないように、資産について話をしておきたい」と言うのです。私はまったく知りませんでしたが、実家には耐火金庫があり、そこには通帳や実印、土地の権利書などが保管されていました。

中でも私たちが驚いたのは、2000万円もの札束です。これはやましいお金ではなく、コツコツと貯めていたもののようですが、万が一の入院や手術、介護施設への入居も想定して備えていたとのこと。何かあったらこれを使ってくれと言われました。

タンス預金を隠して相続税の申告をする、なんていう相続対策の話を以前聞いたことがありますが、両親はそんなつもりは毛頭なく、ただ家にお金を置いておくと安心だからという理由で貯め続けていたようです。

実は私も、急な出費に備えて100万円ほどの現金を自宅に置いています。100万円は備えでタンス預金という感覚はありませんでしたが、両親のように4ケタともなると急に不安がよぎります。家に強盗が入ったら……!? 失くしてしまったらどうするの? など、考えればキリがありません。

実際のところ、タンス預金で損をしてしまうようなことはあるのでしょうか。

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タンス預金のメリットとデメリット
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