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リンチで殺された黒人少年、その母がとった行動は。BLM運動の原点となった事件を描く映画『ティル』が気づかせてくれること

2023.12.15

長谷川朋子

子どもへの愛が、社会さえも変える力になる

「エメット・ティル殺害事件」はキング牧師らが率いた公⺠権運動を⼤きく前進させるきっかけとなった事件と言われています。2020年、アメリカ中西部のミネソタ州でジョージ・フロイドさんが白人の警察官から不適切に拘束されて死亡した事件を発端に広がったBLM（ブラック・ライヴス・マター）運動は記憶に新しいところでしょう。

構造的な人種差別を根絶させていこうとする声が世界的に広まっているわけですが、14歳の黒人少年エメットの犠牲と母メイミーの存在をこの映画を通じて改めて知ることで、数十年の時をかけてアメリカ社会に変革をもたらしたことを見つめることができるのです。2022年３月にはアメリカで「エメット・ティル反リンチ法」が成立するまでに至っています。

今こそ届けるべき物語として、作品に対する評価は高く、賞レースを席巻しています。勇気を出して立ち上がるメイミーを全身全霊で演じたダニエル・デッドワイラーは、ゴッサム・インディペンデント映画賞など数々の場で⼥優賞を総なめです。また60以上の映画祭で21 部⾨受賞、86 部⾨ノミネートという輝かしい実績を残しています。

そして、この作品の真の価値は子供に愛情を注ぐ母性が社会さえも変える力にもなることを気づかせてくれることだと思います。

＜作品紹介＞
映画『ティル』

12月15日（金）よりTOHOシネマズシャンテほか全国公開

製作：ウーピー・ゴールドバーグ
監督・脚本：シノニエ・チュクウ
出演：ダニエル・デッドワイラー、ウーピー・ゴールドバーグ、ジェイリン・ホール、ショーン・パトリック・トーマス、ジョン・ダグラス・トンプソン、ヘイリー・ベネット
2022年／アメリカ／シネマスコープ／130分／カラー／英語／5.1ch／原題『TILL』／字幕翻訳：風間綾平／PG-12／配給：パルコ　ユニバーサル映画　
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構成／山崎恵