ニュースキャスターとして、30年以上、テレビの報道現場に立ち続けた安藤優子さん。2020年9月に「直撃LIVE グッディ!」(フジテレビ)の司会を卒業し、近年は、日々のファッションや手料理の投稿に注目が集まり、世代を越えた女性ファンが増えています。

昨年末には初のライフスタイルブック『アンドーの今もずっと好きなもの。』(宝島社)を刊行。安藤さんがすべて自分でコーディネートしたファッションや手料理、愛犬リンゴとの暮らしを、たくさんの写真とともに紹介しています。説得力のあるコーディネート力やセンスの良さが輝いている一冊です。

後編では、男社会である報道の現場で感じたこと、40歳を過ぎて入学した大学院での研究、生きる基本でもある「食」についてお話をお聞きしました。

 

安藤優子
キャスター/ジャーナリスト。1958年、千葉県生まれ。上智大学在学中にアルバイトをしていたところをスカウトされ、報道番組「BIG NEWS SHOW いま世界は」(テレビ朝日)にレギュラー出演。1987年より「FNNスーパータイム」(フジテレビ)にレギュラー出演、大学に通いながらテレビ出演を続けた。その後、「FNNスーパーニュース」(フジテレビ)メインキャスター、「直撃LIVE グッディ!」(フジテレビ)総合司会を務める。2019年、上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究科グローバル社会専攻。グローバル社会学博士号取得。現在はメディア出演や講演活動のほか、2023年4月より椙山女学園大学の客員教授に。夫と愛犬・リンゴの2人+1匹暮らし。
Instagram @yukoando0203


インタビュー前編
​報道キャスターが、60代で人気インスタグラマーに!安藤優子さんの、「今もずっと好きなもの。」を培ったもの>>

 


“ペット化”と“おっさん化”で乗り切った先にあったもの


安藤さんがテレビの世界に入ったのは、上智大学在学中のこと。旅番組のレポーターとして海外に行けるということで、当時は軽い気持ちだったのですが、その後、さまざまな番組で起用が続き、気づけば報道の現場へ。

「フジテレビの番組が長かったので、フジテレビの社員で、アナウンス室のお局みたいに思われていることもありますが、アナウンス室には一度も行ったことがないし、ずっとフリーランスです。男社会の中、何も知らない、ど素人の大学生が入ってきたので、『何だ、あの宇宙人は?』みたいな感じだったと思います。それでも、なんとか一緒に仕事をしなくてはなりません」

男性司会者の横で頷いて愛想笑いしろと言われてもよく理解できず、仏頂面で座っていたら、「もっと笑え」「かわいくない」と言われ、女性らしい服を着たら「チャラチャラするな」と怒られ、何が正解なのか分からなかったといいます。それでも、仕事をしていく以上、おじさんたちの世界でやっていくしかありません。そこで、安藤さんが取った戦略は“ペット化”でした。

「はじめは全然仕事ができなかったから、おじさんたちにかわいがってもらうしかない。“ペット化”で自分の居場所を作っていきました」

そうするうちに、取材の機会を与えられることが増え、現場にも出るようになっていきます。経験を積むことで、少しずつ仕事ができるようになっていきました。そうすると、“ペット化”でかわいがってくれたはずのおじさんたちが、次第に安藤さんをライバル視するようになっていきました。

「俺たちが汗水垂らして頑張ってきた現場を若い女に取られる、みたいな感じだったと思います。自分の居場所を奪われるかもという感覚で、それがむき出しになることもありました。『どうせお前は女だから、あの仕事ができたんだろう』といったことを言われたりとか……。そうなると、私も『女だから』と言われたくないから、自分もおじさんみたいに振る舞って同化していく“おじさん化”にシフトしていきました」

とはいえ、本当のおじさんにはなれないため、スーツや白いシャツといった服を身に着け、様態をおじさんに近づけていくことになります。

「あの時は、必要以上に女性性を捨てていました。そうせざるを得なかったというよりは、やっぱり私も力が入りすぎていて、『絶対に女だからできないと言わせない』と思いすぎていたところもありました。女性性を封印するということは、女性であることの否定で、女性に対して極めて失礼なことだった。私はあの時代、そんな働き方しかできなかったけど、あとに続く後輩には、やっぱり自分らしくあってほしいと常に思っています」