「内的動機がわからない」人は分析ツールを使う方法も

——昨年高橋先生にインタビューさせていただいてから、私の内的動機は何か、自分をドライブするものは何かずっと考えてきました。最近それがわかった気がするんです。私の場合は、挑戦したり、新しいものや未知のものに取り組むと自然とやる気が湧きます。たとえそれがさほど興味のない分野でも、何かに挑戦するときはワクワクするんです。だからこそ、興味のなかった(なんて、言ってはいけないのですが)建築の世界に飛び込めたのだと思います。

川良:なるほど。私が当てはまったのは、相手を理解したいという部分でしょうか。女性たちがもっと幸せに、輝けるように、何かできないかという気持ちが昔からあって。ミモレで編集長をやらせていただいているのも、キャリアコンサルタントの資格を取ったのも、立ち返るところは「女性たちを理解した上で役に立ちたい」ということだと感じます。

 

高橋:お二人とも、自分の内的動機と仕事への取り組み方がマッチしているようですね。「自分らしい働き方」ができているということでしょう。加えて、同じ仕事でもその内的動機を使うかでより「自分らしい仕事」に近づくことができます。例えば、営業職の場合、内的動機が影響欲なら相手に「イエス」と言わせる交渉術を身につける。達成欲ならあえて難しい顧客にチャレンジする。闘争心ならライバルを意識する。感謝欲なら顧客に気に入られる営業を目指す。理解欲なら相手の心理を読みに行く、など。自分らしいスタイルを意識して仕事をすることで、自分らしいキャリアの形成ができるのです。

もし今、自分の内的動機がまったく分からないという方は、MBTI(マイヤーズ・ブリッグスタイプ指標)やエニアグラムなどの性格診断ツールがありますので、それらを受けてみるのもよいでしょう。また、内的動機は主にゲノムや幼少期の影響により形成されると考えられており、遺伝子解析によってある程度わかります。そうしたサービスを利用するのもよいかもしれません。
 

 


「自分らしい道」に出会う確率を上げる「越境学習」のすすめ

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——自分をドライブするもの、自分の内的動機がつかめたら、次はどのようなことに取り組んでいけばよいでしょうか。

高橋:次のステップとして、“これは自分らしい道かもしれない”というものに出会う確率を上げることが大切です。そのためにどうすれば良いかというと、「越境学習」です。越境学習とは、自分がいる場、つまり“ホーム”とは異なる場、“アウェー”へ飛び込んで学ぶことです。

 

狭い世界にいていつも同じ人と話していると、自分も物事も人脈も煮詰まってしまいます。越境学習によってさまざまな領域の人々に接し、学び合うことによって、自分を俯瞰的に見ることができるようになったり、自分が本当にやりたかったことを発見できたりすることもあります。

出向や留学、異業種交流などだけが越境学習ではありません。個人としてPTAやボランティア活動、プロボノ(専門性を活かしたボランティア活動)などに参加することも含まれます。新しい世界に足を踏み入れることで、「偶然の出会い」をし、自らの意外な能力に目覚めることがあるのです。

経験学習が専門性を伸ばす「縦の学び」だとすると、越境学習はさまざまな分野、人と関わる「横の学び」です。