ある日曜日の昼下がり、私は東京で原田さんに会いました。散歩途中に入ったカフェに近所の雑貨屋さんでのポップアップ開催を知らせるフライヤーがあり、足を運んでみたらシルク素材のピンクパンツに一目惚れ(そのピンクのパンツはこちら)。そのパンツを手に取った時、店のマダムから「あそこにいる彼がリメイクしたのよ」と紹介してもらったのが原田さんでした。

その約1ヶ月後。私は、熊本市内にある原田さんの店におしかけ、再会する運びとなりました(と、間のストーリーを思いっきり省略してしまいましたが、まっ、端的に言うと、そういうことです笑)。

こちらが原田さん。初対面の時からそうでしたが、人に警戒感を抱かせない、天性の“人ったらし”な雰囲気であります(笑)。


店の名前はLittle Vingtage。世界各地から買い付けてきたヴィンテージやアンティークの洋服や生地を使って、ハンドメイドで服や小物を創っているのが特徴です。

洋服というモノは
ちょっとした事で着なくなる。
そのちょっとした
マイナス部分をプラスに変えていく。

それこそがデザイン


そう、そもそも私はフライヤーに書かれていた、このメッセージに惹かれポップアップに赴いたのでした。

  • ショップには、スタッフの方たちの手で生まれ変わったアイテムたちが所狭しと並びます。洋服好き、デザイン好きの若者が多いのかと思いきや、「40、50、60代の女性のお客さんが多いんですよ」と原田さん。
  • 店内横にはミニキッチン、奥にはアトリエスペースが。店全体がスタッフの方々の秘密基地のようで楽しいです。この日、お茶を入れていただいたら、茶柱が立っており、「いいことありそう」と皆でニンマリ。
  • スタッフは全員で4名。うち2名は店のお客さんがそのままスタッフになってしまったのだそうで、「自由ですね」と言うと「来る者拒まずです(笑)」と原田さん。どこまでも大らかな男!


数日後、N.Y.に買い付けに旅立つという原田さんに「今は西海岸じゃなくて、東海岸にヴィンテージショップが多いのですか?」と聞くと、「今、また空前の古着ブームになってしまっていて、西海岸は日本人バイヤーだらけになっちゃったんですよ」。サイズが大きかったり、(古着とはいえ)デザインが今の気分には合わなかったりといった少しのマイナス要素により需要がなくなりかけてしまったヴィンテージアイテムたちに新しい命=デザインを吹き込むことが原田さんたちの信条。だから、単純な古着の買い付けとはバイイングの視点が違うのだと言います。

生地の持ち込みをすれば、イージーオーダー(店にいくつかのデザイン画が用意されている)も可能。
手元にある服を持ち込んでリメイクを依頼されることも。今はポップアップなどで対面したことがある方のみ、郵送でのオーダーを受け付けているそうですよ。


個人売買を簡単にしたメルカリの登場で、「若い人たちの間で古着やリユースに対するハードルが思いっきり下がったことが今回の古着ブームのキッカケじゃないかな」と原田さんは言います。「であるならば、今の古着ブームはいつか終わるブームではなく、このまま定番化しそうですね」と私。

熊本市内に訪れた際は、ぜひ大森を信じて勇気を出してお店に飛び込んでみてください(笑)。ちなみに、11月に再び東京でのポップアップの予定があるそうです。


昨今のヴィンテージ事情。大好きなものをとことん着たおすといったサスティナビリティの観点より、一点もののデザインを安く消費するといったムードで語られることが多くなってきたように思います。そんな時代に原田さんのような気骨の人が存在してくれることは頼もしいかぎりだと私は思うのです。

今日のお品書き
出産後の女性のキャリア継続の難しさに憤って『「育休世代」のジレンマ』という著書を執筆されたジャーナリスト中野円佳さんが今日からミモレ執筆陣に加わります。社会問題や子育て、ジェンダーについて、国際的な視点から日本社会を斬って斬って斬りまくっていただきたいな、と思っています。