鎌倉で暮らす人の味覚カレンダー


鎌倉で暮らす甘糟さんには、鎌倉ならではの味覚カレンダーがあります。それは家族の思い出の味でもあり、伝統の味でもあれば、新しい鎌倉を象徴する味でもあります。書籍『鎌倉の家』より、その一部を甘糟さんご自身が撮った写真とともにご紹介しましょう。

 3月 
「浜野水産」の釜揚げしらすで春を先駆け

鎌倉で暮らす作家 甘糟りり子さんが通う美味しい店7軒<春夏編>_img1
3月11日は相模湾のしらす漁の解禁日。鎌倉は街中「しらす」の文字が溢れるそうなのですが、甘糟さんのおすすめは片瀬江ノ島の「浜野水産」。春の先駆けにと友人知人に贈ることもあるといいます。
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「浜野水産」の釜揚げしらすは、まずはしらすだけを箸でつまみ、その後ご飯などに惜しみなく乗せて頂きます。「塩辛くないけど潮の味がしっかりとあって、ふわふわなんです」(『鎌倉の家』より)

 

 

 4月 
「ハウス オブ フレーバーズ」のクラシックな苺の“ケーキ”と鎌倉山の景色を楽しむ

鎌倉で暮らす作家 甘糟りり子さんが通う美味しい店7軒<春夏編>_img5
鎌倉山にあるコーヒーと洋菓子のお店「ハウス オブ フレーバーズ」。建築家・齋藤裕氏による木の葉型の建物が特徴的です。「ハウス オブ フレーバーズはホルトハウス房子さんのセンスと齋藤裕氏の発想と鎌倉山の景色を味わう空間なのだ」(『鎌倉の家』より)。
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甘糟さんが4月になると必ず食べに行くのは「オールドファッション・ド・ストロベリーショートケーキ」。ショートケーキの原型になったレシピを再現した苺のケーキで、この時期数日間限定で出されるものだそうです。


 5月 
春と夏の間の季節の美しさ。上生菓子店「美鈴」のお菓子「昇鯉」

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宝戒寺のそばにある上生菓子の店「美鈴」。「店までの細い小道が美しく、学生の頃、毋にここへのお使いを頼まれるとこの道を歩くのが嬉しかった」(『鎌倉の家』より)
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「“昇鯉”は求肥と大角豆(ささげ)のお菓子で、半透明な求肥の水色が春と夏の間の季節によく合う」(『鎌倉の家』より)


 6月 
イタリア料理店「ジョイア」で「自家製青トマトのジャムとリコッタチーズのブルスケッタ」を

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6月になったら、鎌倉駅裏駅にあるイタリア店「ジョイア」で花ズッキーニのフライと「自家製青トマトのジャムとリコッタチーズのブルスケッタ」を。写真の青トマトのブルスケッタは、トマトのフレッシュさとリコッタチーズの濃厚さのバランスを楽しむ一品。「この店は畑を持っていて野菜はすべて自家製。(中略)トマトが赤くなる前に採ってしまえるのは、自分たちで畑を持っているからこそだろう」(『鎌倉の家』より)。


由比ケ浜通りの日本料理店「一平」で鱧を食す

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毎年、6月に日本料理店「一平」で鱧(はも)を食すのも夏前の恒例行事。このお店との出会いで甘糟さんは鱧は京都のものだけではないと知ったといいます。
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「カウンターだけの小さなお店で、一平さんが大きな鱧専用の包丁を自在に操るのを見ながら日本酒をやり、今年も夏がやってくることを確認する」(『鎌倉の家』より)


 7月 
長谷のバー「ケルピー」でスイカのカクテルを

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長谷観音の交差点の往来を見下ろせる「バー ケルピー」は甘糟さんの行きつけ。
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7月にはスイカのカクテルを。「これを初めて飲んだときは驚いた。スイカってこんなエレガントな果物だっただろうか」(『鎌倉の家』より)


 8月 
円覚寺での法要帰りには「光泉」のいなり寿司

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お父様も眠るお墓は円覚寺に。8月の法要のときは事前に北鎌倉駅の「光泉」でいなり寿司を予約し、炎天下でぐったりした法要後に自宅で頂くのだそう。
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「うっすらとした甘辛で、一見どうということもないシンプルなもの。でもそこがいい。シンプルだからこそ、ていねいな過程が舌で分かる」(『鎌倉の家』より)

 

いかがでしたか? 甘糟さんの季節の味覚を辿ると鎌倉での暮らしがリアルに垣間見えるようです。詳しくはぜひ『鎌倉の家』をお読みください!

次回は、「甘糟りり子さんが通う美味しい店7軒<秋冬編>」をお届けします。

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『鎌倉の家』
甘糟りり子 著 ¥1600(税別)河出書房新社刊

高い天井には太い梁、客間には囲炉裏、庭に咲き誇る四季の花々―風情ある日本家屋で育った著者が、鎌倉の魅力を鮮やかに描き出すエッセイ。戦前に建った風情溢れる日本家屋、家族の思い出の味、山菜料理でのおもてなしと器のほか、鎌倉暮らしに欠せない味、店も多数紹介されています。


構成・文/川良咲子(編集部)
 
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