『シンプルな生き方』他人より、まずは自分の面倒をみよう
年を重ねて、二通りある知の形を峻別しなくてはならない
と考えるようになった。すなわち知能と心知で、頭よりも心の方が
はるかに大事だという確信は揺るぎない。(中略)
が、それにしても、これまで知り合った立派な人間はみな、
頭で考えるよりも心の働きで愚を犯すことを免れている。
― ジョージ・ギッシング、イギリスの作家、
『ヘンリー・ライクロフトの私記』池央耿訳、光文社古典新訳文庫より
あなた自身のためにも時間を割くようにしましょう。ひとりになることは、ひとりで考え、人の影響を受けずに問題を解くことを可能にしてくれます。
今の世の中、まったくひとりでいられることは滅多になく、たとえそうであってもどこかでメールやSNSなどで人とつながっていることが多いものです。
ときには世間とのつながりを意識的に断ってみること、そしてひとりになる時間を確保するのはいいものです。
ひとりランチはもちろんのこと、ひとりで日帰りの旅や、お芝居を観に出掛けてみるのも悪くないでしょう。他人よりもまずは自分の面倒をみるのです。自分を優先させてみると、他人とのつながりをよりよく理解できるようになります。退屈だから友人に会いたい、というのは一種の物乞い行為です。友人たちに会うというのは、あなたからもその人たちに楽しい時間を提供し、一緒に楽しみを共有することだと私は思います。
あなたは自分にとってさほど必要のない人たちと、どれだけの時間を一緒にすごしていますか。あなたは電話のコールバック、夕食の招待への返事、メールの返信にどれだけのエネルギーを費やしていますか。
ちょっと素敵な人だから、という単純な理由だけで、すぐにアドレス帳に追加するのはやめましょう。
ドミニック・ローホー
著述家。フランス生まれ。ソルボンヌ大学で修士号を取得し、イギリス、アメリカ、日本の大学で教鞭を取る。モノにとらわれず心豊かに暮らす「シンプルライフ」を自ら実践。それを本にまとめた『シンプルに生きる』(講談社+α文庫)が欧米、アジアでベストセラーに。他に『シンプルリスト』『「限りなく少なく」豊かに生きる』(ともに講談社)など著書多数。また禅や墨絵を通して日本の精神文化に理解が深いことでも知られる。
<新刊紹介>
『バック・トゥ・レトロ 私が選んだもので私は充分』
ドミニック・ローホー 著 原 秋子 訳 1200円(税抜) 講談社
自ら実践する「シンプルな生き方」を発信し、フランスをはじめ欧米やアジア各国で、著書が累計250万部を超えるベストセラーに。本書には、「今いる場所で幸せになるヒント」「より良い運命の軌道に乗る秘訣」が綴られています。ものや情報があふれ、競争が競争を呼ぶ世界に私たちはいます。豊かではあるけれど、心は昔より「軽く」なったとは思えません。だからレトロに注目したのです――過去のよい記憶として残っているものは、イコール、シンプルな生き方のお手本になります。持ちものから、人間関係、ネットの情報、そして心の整理まで、生きる喜びをより感じられる上質な暮らしのために、ドミニック・ローホーがアドバイスします。
構成・文/柳田啓輔 (編集部)
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