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『シンプルに生きる』SNSとクレジットカードを退会することから始める

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ある人が持っているもので、
その人の孤独に寄り添い、与えたり奪ったりできないもの、
これこそがその人の外見や持ち物すべてよりも大切なものなのだ。

― アルトゥル・ショーペンハウアー、
19世紀を代表するドイツの哲学者

過剰な情報から逃れるためには、一歩一歩小さな取り組みから始めるのがいいでしょう。まずはSNSを退会してみます。クレジットカードも使う回数を減らして、買い物は現金で支払うようにします。公的書類も紙のものを郵送してもらうように依頼しましょう。

私たちはまだ地図を見たり、ラジオでニュースや音楽を聴いたり、紙の本を読んだり、図書館や劇場やコンサートに出掛けたり、直接口頭で指示を仰いだりする機会があるだけ幸せです。

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友人には電子メールでのやりとりを極力減らしたいこと、それよりも肉声が聞ける電話のほうが嬉しいと伝えましょう。そして笑いを交えながら、直接会う機会をつくってその日を待つほうがより楽しみも増すから、と伝えましょう。このような取り組みで私たちは、いったん自らを社会ののけ者にするという「マージナル化」のプロセスを踏むことになるかもしれませんが、まずはインターネットに接続された世界に対し最大限の警戒を怠らないこと、そこに可能なかぎりはまり込まないようにすることから始めてみませんか。

1970年代を振り返ると、今のような便利さ、快適さ、そして多種多様な情報こそありませんでしたが、私たちはずっと自然に、 呑気に、明日を信じて生きていたと思います。

休日の日曜日にメールで請求書が届いたり、上司からの苦情や緊急の仕事依頼が舞い込んだりすることなどは、もちろん想定外でした。

ますます複雑で騒々しくなっていく現代の生活の中で本当は私たち、過去のシンプルな生活に舞い戻ることを夢見ているのではないでしょうか。
もちろん今さら昔にあと戻りすることはできません。でも精神的な「簡素」さを身につけることはできるのではないでしょうか。

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ドミニック・ローホー
著述家。フランス生まれ。ソルボンヌ大学で修士号を取得し、イギリス、アメリカ、日本の大学で教鞭を取る。モノにとらわれず心豊かに暮らす「シンプルライフ」を自ら実践。それを本にまとめた『シンプルに生きる』(講談社+α文庫)が欧米、アジアでベストセラーに。他に『シンプルリスト』「限りなく少なく」豊かに生きる』(ともに講談社)など著書多数。また禅や墨絵を通して日本の精神文化に理解が深いことでも知られる。

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<新刊紹介>
『バック・トゥ・レトロ 私が選んだもので私は充分』

ドミニック・ローホー 著 原 秋子 訳 1200円(税抜) 講談社

自ら実践する「シンプルな生き方」を発信し、フランスをはじめ欧米やアジア各国で、著書が累計250万部を超えるベストセラーに。本書には、「今いる場所で幸せになるヒント」「より良い運命の軌道に乗る秘訣」が綴られています。ものや情報があふれ、競争が競争を呼ぶ世界に私たちはいます。豊かではあるけれど、心は昔より「軽く」なったとは思えません。だからレトロに注目したのです――過去のよい記憶として残っているものは、イコール、シンプルな生き方のお手本になります。持ちものから、人間関係、ネットの情報、そして心の整理まで、生きる喜びをより感じられる上質な暮らしのために、ドミニック・ローホーがアドバイスします。


構成・文/柳田啓輔 (編集部)