その場にいた女の子たちは黙ってしまっている。
 

「そういうことあったってこと? 最近」


修が話に参戦する。

「そうよ。それが一人じゃないんだもん。何人かだよ」

「それって、のろけ?」

「のろけじゃないって。ある意味どういう感覚なんだろうなって。そんなとこでポイント稼ぎできないし、逆に面倒に感じるってこと。もう来る来ないの以前に、メールなりラインなりそのあたりのやりとりから面倒になってくる。そもそも具合悪いんだし」

「だっから、お前はずっと独身なんじゃねーの? ハハハ」

「そういうこと? そこですかあ~?」

 

修とメガネ男は、適当に笑ってその場の会話を済ましていた。
 

修が里奈に話す。

「雑誌のステーションってあるじゃない? ちょっとした雑貨とか高級品とかそういうの、よく出てる……」

「ああ、ステーション。有名だよね」

「こないだあれにも出てたんだ。この男。ほら、言ったじゃん。社長って。アイツよ、アイツ」

「ああ、どうも……」

「結構その業界では有名になっちゃったみたいよ」

「そうなんだ~」

 

愛想笑いで里奈を見るメガネの社長男。滝岡勇史さんというそうな。
もうこの男はアウト、と里奈は感じていた。

 

「で? 二人はできてるんでしょ?」

勇史が里奈と加藤に向かっていきなり切り出した。

「はい?!」

里奈と加藤は同時に叫んでしまう。

「なんかそろってるし、そういうとこもハハハ」

「この人結婚してるんですよ?!」

里奈がむきになって話す。

「あれ~? 加藤さんって結婚してたんだ。指輪してないじゃない?」

「いや、仕事柄、機械いじりが多いからしてないだけで」

「そうなんだ……」

里奈をちらりと見やる勇史。とはいえ、焼き鳥に手が向いていく。

時間とともに、合コンは、途中から来た20代前半の広告代理店勤務、彩花ちゃんがすべて美味しいところを持っていき、年配女子は笑って黙って呑むしかなくなった。

里奈は別に見た目がおばさんというわけでもない。結構きれいなほうである。しかし、彩花のはじけ方を見ていると、自分が年かさな気がしてならなかった。


「うっそ~! 本場フランスで貝の食べ方ってあるんですよ~!こうやって、貝同志で具を取って食べるの~。私、小さい頃住んでたんで~~」

 

彩花ちゃんの可愛い声が際立ち、どうでもいい話題で盛り上がるのを尻目に、もう帰ろうと席を立った。

 

居酒屋の廊下に出たところで、勇史に出くわした。

「いっしょに出ます?」