米倉涼子さんが見た、最新のおすすめエンタメ情報をお届けします。
コロナ禍で、新しい試みとして劇場公演と同時にライブ配信されるエンターテイメントも増えている今日この頃。私もPARCO劇場で行われた三谷幸喜さん作・演出の舞台『大地』のライブ配信を観てみました。
実はこれまでテレビで放送されている舞台の映像は、スルーしていたんです。言い訳のように聞こえてしまうかもしれませんが、劇場ではなく家で観るとどうしても集中力を保たせるのが大変で……という人は、少なくないのでは!?
もちろん生で観るのが一番ということは大前提として、今はコロナ禍という異常事態。舞台に触れる選択肢が増えたのは良いことだと捉えています。
三谷さんが書き下ろした『大地』は、とある共産主義国家にある、反政府主義者とみなされた俳優たちが収容された施設での物語。政府の監視下で大地を耕して農場を作り、家畜の世話をする過酷な暮らしの中で、演じることを禁じられた彼らの毎日を描いています。
大泉洋さん、山本耕史さん、浅野和之さんをはじめ、とにかくキャストが豪華!
ソーシャルディスタンスバージョンということなのか?段々畑のようなセットで役者さん同士の距離がとられた工夫がされていました。役者についてのストーリーは入り込みやすかったですし、大好きな浅野さんのパントマイムも見られてうれしかったです(笑)。
初めて舞台のライブ配信を観て、オンラインの画面越しでも気持ちは伝わるんだな、と思いました。寄りと引きがあるカメラワークで“今はここを観て”と導いてくれるという点では、舞台を見慣れていない人にも優しい観劇方法かもしれません。
気が滅入るニュースばかりの今、新しい観劇方法でエンターテイメントに触れて気持ちが晴れる瞬間があるのならば、それは素晴らしいこと。楽屋にあいさつには行けませんでしたが、山本耕史さんには「配信、観たよ〜!」と連絡をして、コミュニケーションをとりました。
一方で、舞台に出る側の人間として考えたこともあります。
私が同じ立場なら、この状況下でもお客さんが待っているから舞台に立ちます、とすぐに決断できるのかどうか。やっぱり怖いという気持ちも芽生えるのではないか……。
俳優の頑張りを美談にしてはいけないと思うのは、『シカゴ』で共演したアムラ(・フェイ・ライト)から、ブロードウェイにはしっかりとしたユニオンがあって、お休みしている間の補償金も出ると聞いているからかもしれません。
私自身は図らずも再出発の時期と重なり、ゆっくり自分を見つめ直すいい機会にもなっています。Netflixを見たり、お稽古に通ったり、オフィスの準備をしたり……、インプットの時間を持ってひとつひとつの仕事と向き合いながら、自分らしいペースで進んでいきたいと思っています。
構成/片岡千晶(編集部)
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