2020年時点における日本の65歳以上の高齢者人口の割合は、なんと世界最高。高齢化社会の真っただ中で生きる世代の人たちは特に、親の心配に加え、「高齢者なんてまだまだ先のこと」と思っていた自分自身の体調にも不安がよぎり始めるころ。親も自分も人生100年時代を生きる今、何より気をつけたいのは健康ですよね。そこでご紹介したいのが、薬学博士・杉本八郎先生の著書『世界初・認知症薬開発博士が教える 認知症予防 最高の教科書』です。
杉本先生は、世界初のアルツハイマー型認知症薬「アリセプト」を開発し、長年認知症の研究に携わってきた人物。その研究を土台に最新の研究成果や論文を反映した本書は、私たちの生活にも取り入れやすい認知症予防法を教えてくれる一冊です。そこで今回は特別に、“認知症予防の効果が期待できる食品”について、本書から一部抜粋してご紹介します。

カレーとビールが効く!? 認知症予防薬を開発した博士の「認知症予防食」とは_img0
 

私は、1961年に製薬会社のエーザイに入社してから、現在に至るまで約60年にわたり、薬の研究・開発を続けてきました。ありがたいことに、世界で初となるアルツハイマー型認知症の治療薬「アリセプト」の開発に成功するという幸運にも恵まれ、英国ガリアン賞特別賞(薬学会のノーベル賞といわれる)も受賞させていただきました。

 


食習慣を見直すことで、認知症は予防できる


現在、世界中の研究者が競い合って、アルツハイマー病の根本治療薬の研究・開発を進めています。もちろん、私もその一人ですが、根本治療薬の誕生までには、まだ少なくとも数年はかかると思われます。

そこで、認知症を予防するために重要になってくるのが、「生活習慣」です。生活習慣のなかでも、今回は「食習慣」について紹介します。

「食習慣を見直す」というと、食べる量を制限したり、摂取するカロリーを減らしたりと、いわゆる「ダイエット」を思い浮かべる人も多いかもしれません。もちろん、肥満は万病のもとですから、食べ過ぎは控えるべきでしょう。しかし、ここで取り上げたい「食習慣」の見直しとは、「認知症の予防に効果のある食べ物を、まずはしっかりと把握し、それを適切に食べるように心がける」ことです。
 

認知症薬の研究でわかった、予防の有効成分を含む食品


私は、新薬開発のためアルツハイマー病の「根本治療薬」の“種”になるような物質(=シード化合物)を求めて、常に世界中の最新の研究成果や論文に目を通し、情報を集めています。

その情報をもとに、それらが含まれる食品はどういったものがあるかを紹介します。ただし、それらの食品が確実に認知症予防に効くかどうかの治験をしたわけではありません。確実な結果を得るためには、厳正に管理された一人の人間の一生分の記録を追う必要があるからです。

そのため、私が新薬開発において「この成分は認知症予防に効くのでは」と見当をつけた成分が含まれ、さらに認知症予防について他の機関で研究をして、結果が出ている食品類を紹介します。