時代の潮目を迎えた今、自分ごととして考えたい社会問題について小島慶子さんが取り上げます。

【女性アナネット発足】いま60名の女性アナがジェンダー意識を共有し、つながる理由_img0
 

組織を超えた横の繋がりが欲しい! 同じ不安や問題意識を持つ仲間と出逢いたい! そんなふうに思ったことはないですか? 安心して話せる、建設的な議論の場があったらな、って。

 

今年の春、そんな思いから、あるネットワークが誕生しました。「女性アナウンサーネットワーク(FAN)」です。団扇みたいな涼しげな略称ですね。6月半ば現在、60名ほどの女性アナウンサー・キャスターや、彼女たちを応援する専門家らがメーリングリストに参加しています。所属不問、現職・元職不問。キー局・系列局のアナウンサー、フリーのキャスターや若手アナなど色々な人がいます。女性アナウンサーが今よりも幅広い役割で活躍し、長くキャリアを築けるようにしよう、ジェンダーの押し付けや性差別的な習慣をなくそうと考える人たちが緩やかにつながる場を目指しています。月に一度オンライン勉強会を開き、パンデミックが終わったら、オフラインでの交流会もしたいねと話しています。

きっかけは、クラブハウスでした。今年3月8日の国際女性デーを前に、メディアで働く女性たちの有志が、あるリレートークを企画。1時間ごとにテーマを変えて、半日間、次々といろんな人たちがルームを開いてはジェンダーの課題を話し合いました。その中に「女性アナウンサーと考えるメディア表現とジェンダー」というテーマのルームがあり、現役アナウンサーや研究者、ジャーナリストらで議論したのです。私も参加しました。

女性アナウンサーに求められる役割の偏りや、長い目でキャリアを築けないような起用の仕方、性的な商品として消費される構造。視聴者の眼差し、番組制作現場でのセクハラや、ジェンダーに関する無理解。海外メディアと日本のメディアの違いなどを話していると、次々とキャスターたちが集まってきて、やっぱりこれはおかしいよね、もっと色々な女性が、年齢を重ねても第一線で活躍できるようにしたいよねと盛り上がりました。そこから「じゃあネットワークを作ろう」という話になって、FANが誕生したというわけです。

もしかしたら、女性アナウンサーにあまり良い印象を持っていない人もいるかもしれません。取りすました計算高い女性とか、軽薄な媚びる女性という印象かも。でも実際は、そうした役割を変えていきたいと思っている真面目な人がたくさんいます。

これ、アナウンサーだけの問題じゃないんですよね。職場の飲み会で女性新入社員をいじる、若い女性社員を部長の横に座らせる、お酌をさせる。誰が可愛いか、勝手に格付けする。仕事中に下ネタで盛り上がる、独身女性を揶揄う、体型や容姿をネタにする、女性は会議では黙っているべき。男性同僚や上司をケアするべき。化粧していない女性はマナー違反、化粧が濃い女性は非常識。「女性を応援するよ!」とは言うものの、女性が本気で力を発揮すると潰す。女性が成果を上げれば体を使ったと陰口を叩き、失敗すると女だからと貶す。セクハラは感じ良く流すか、エロく返すか、面白く茶化すべき。抗議するなんてとんでもない。そう、どこにでもある日本の職場の風景です。

女性アナウンサーにはそんな「模範的な女性会社員」と「最強の職場の華」であることが求められます。ニュースキャスターや司会者を目指そうと思ったら、まずは「人気女子アナ」にならないと生き残れない。将来は部長や役員を目指す若い女性が、“女子”扱いされて男社会でどう生き残ればいいのかと葛藤するのにも通じます。もう、そんな歪んだ構造は変えたいですよね。

 
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