皆さん、こんにちは。梅津奏です。

 

「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」

『嫌われる勇気』でおなじみ、心理学者アルフレッド・アドラーはこういったそうです。

 

痛い、胸が痛いです……。


対人関係を円滑にするのに必要なものはなんだろう。コミュニケーション能力とか、愛とかかな。でもこの二つって、「生まれながらに持っている人は持っているし、持っていない人は持っていない」ものじゃないですか?

「私、人見知りでコミュ障だもん」
「あの人は愛されキャラでいいよね」

そうやっていじけがちな私に勇気を与えてくれる本、そしてすぐ調子に乗る私に冷や水をかけてくれる本を、今日は紹介します。


「コミュニケイションのレッスン」鴻上尚史

バタやんさんのラジオで知り、読んだ本です。どえらい良い本でした。そして今週更新された「2021年上半期この小説がすごかった!ベスト3」。三作ともウルトラミラクル面白いので私からも激しくおすすめです!

劇作家・演出家の鴻上さん。言葉やコミュニケーション、「社会の空気」との付き合い方など、生き方に関する著作も多く発表されています。


30年以上演劇の演出家を続けてきて、一つだけ分かったことがあります。それは、「コミュニケイションは技術だ」ということです。技術ですから、やり方次第でどんどん上達するんだ、ということです。


誰とでもすぐ仲良くなれて、対立したり誤解されることなく付き合える人。そういう人、いるんですよね(嫉妬)。生まれながらにセンスのある恵まれた人、と思ってしまいがちですが、どんな人でも訓練次第では技術として身に着けられると鴻上さんは書いています。


コミュニケイションとは、情報と感情をやりとりすることです。具体的には「聞く」「話す」「交渉する」という3つの技術だと僕は思っています。


本を読み進めながら、自分はこれまで誰からコミュニケーションを学んできたのか(多くは両親から)、「社会」と「世間」のどちらを前提に生きているのか、色々なことが明らかになっていきます。同時に、自分がずっとストレスに感じ、悩んできたコミュニケーションの問題がどんどん氷解していきました。これには本当にびっくり。


「愛するということ」エーリッヒ・フロム

 

さて、次のお題は「愛」です。

親子愛、恋愛、博愛、自己愛……。コミュニケーションと同様、愛について悩んだことのない人はいないのではないでしょうか。愛があっても悩むし、なくても悩むし、多くても少なくても悩みますよねえ。


愛は技術だろうか。もし技術だとしたら、知力と努力が必要だ。それとも、愛は快感の一種なのだろうか。つまり、それを経験できるかどうかは運の問題で、運がよければそこに「落ちる」ようなものだろうか。


こんな問いかけから、本書は始まります。

1956年に出版されて以来、世界的なベストセラーとして読み継がれてきた一冊。昨年、著者の生誕120年を記念して、改訳・新装版が出版されました。人間は死に向かって生きているので、孤独への恐怖を紛らわそうとして人とのつながり=愛を求めるのだと、フロムは書いています。そして、「愛は技術」であると。


ところがほとんどの人は、愛を成り立たせるのは対象であって能力ではないと思いこんでいる。(中略)つまり、愛が活動であり、魂の力であることを理解していないために、正しい対象を見つけさえすれば後はひとりでにうまくいくと信じているのだ。


愛を「状況さえととのえば、自動的に手に入るもの」と安易に考えるのは、怠慢なのかもしれないですね。逆にいえば、愛の不足・愛する対象の不在に悩んでいるとしても、知性と努力でなんとかなるのかもしれません。

 

 

誕生日に、伊豆に住むお友達(ハルキスト仲間)が送ってくれたハチミツとカード。よわよわ期の私には沁みすぎるプレゼントです。これは愛だろうか?
 


「とんこつQ&A」今村夏子

いつもブログを読んでくださっている方は、もしかしたらお気づきかもしれません。私が「なんでも勉強すればなんとかなる」と思っている、おべんきょう至上主義の気があるということを……。

あ、これは真面目だとか勤勉だとかいうこととはもちろん違いますよ。単に、追加オプション無しの基本装備だけでこの世に生れてきたことへのコンプレックスによるものです。

「そうかそうか、コミュニケーションも愛も後天的に学べるのか~」

嬉々として本を読んだり事例研究しはじめたりするであろう私。こういうタイプが陥りがちなワナを、グロテスクなまでに分かりやすく描いた小説がありますので、最後に紹介しておきますね。

 

 

こちらはまだ書籍にはなっていません。講談社の文芸誌「群像」に掲載された短編小説です。

主人公の今川は、アルバイト先の中華料理屋で、「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」も満足に言えない不器用な女。優しい店主親子はフォローしてくれるけれど、このままではいけないと奮起し、接客メモを作り始めます。おお、エライ!


寝不足だからというわけではないのだけれど、翌日は大きなミスをした。ランチ時の忙しい時間帯に『ありがとう』が見当たらなくて二時間近くも探し続けるなんて初めてのことだった。

あれあれ?なんだか様子がおかしいです。メモをつくることに夢中になっていく今川は、「らっしゃい」「ありがとう」「暑いですねー」みたいな些細なことまで執拗に執拗に書き留めていきます。そして彼女の接客メモは、新しいアルバイトが店にやってきたことをきっかけに、更に病的にエスカレートしていき……。


マニュアルや模倣に助けられたことがある人は、きっと多いことでしょう。でも、マニュアルがいつの間にか「人間」を凌駕してしまう、ということだって結構ありえると思うのです。思い当たること、ありませんか?

 

こんな感じでしょうか。

愛もコミュニケーションも、学んで身に着けることができる。でも、型やメソッドを学ぶのは、最終的には型やメソッドから自由になるためだということを忘れないようにしないといけませんね。ああ、生きるってムズカシイ。

 

ある休日。ひょんなことから友人と夜散歩。てくてく歩いていたら古本屋さんを発見したので、100円文庫棚で一冊ずつ購入。お財布を持っていなかった私たちに、100円貸してくれた優しい友人夫さんでした。