©British Council / Kenichi Aikawa

「国連とか国連職員って、よく分からない!」そんな声にお応えして、私のブログでは時々、国連で働く友人をコンパクトにご紹介します。今回は、ジュネーブ勤務時代に知り合った小山淑子さんに、三つの質問をしてみました。

 

ー これまでのキャリアで最も印象に残っているお仕事は?

たくさんの砲弾が置かれたアルバニアの武器庫を視察。(2003年)

UNIDIR(国連軍縮研究所)で働いていた時に訪れたアルバニア共和国の地方都市で見た光景が、忘れられません。当時アルバニアでは社会が混乱していて、軍事施設もきちんと管理できておらず、ライフルや砲弾が野ざらしになっていました。私の仕事はそれらを含めた小型武器の回収についての調査でしたが、そのような場所に子どもたちが立ち入って武器が暴発しては大変だからと、近所の主婦の方々がボランティアで、有害物質を含む砲弾を素手で解体していたのです。その後、首都に戻り、アルバニアの改革を支援していたNATO(北大西洋条約機構)の担当者に、対策をお願いしました。危険と隣り合わせで地域の人々の安全を守ろうとする女性たちの姿は、強く印象に残っています。

ー 今は、同じ国連の中でもILO(国際労働機関)でバンコクをベースにお仕事をされていますね。ILOについて、「これだけは押さえておきたい教養ポイント」を教えて下さい。

ILOは、人々が働きがいをもって人間らしく仕事ができるよう、幅広い分野で支援をしています。労働に関する世界共通のルールである国際労働基準を作ったり、失業中あるいは就職できない若者の雇用問題、仕事があっても収入が十分に得られないワーキング・プアなど、仕事にかかわる色々な問題の解決に向け、調査や分析をしたりしています。

台風の被害を受けたフィリピンのタクロバンで、学校に行く代わりに、お金に換えられそうな物を拾い集める子ども。自然災害の後では、このような児童労働のリスクが高まるため、ILOはさまざまな支援をしている。©Minette Rimando/ ILO(2014年6月)

また世界には、本来は学校に通う時期を、十分な教育を受けずに働かされて過ごす子どもたちがいます。その数は1億6800万人以上とも言われ、 その半数以上の8500万人は、危険で有害な労働を強いられています。中には児童兵として武力紛争にかり出される子どもたちも。そのためILOでは、働かされている子どもの救出や社会復帰の手助け、子どもを働かせざるを得ない貧しい家庭への経済的な支援などもしています。

ー ご自身のワークライフバランスについては、どう考えていますか?

私生活では、走ることが好き。タイの地方都市(スコータイ)では、ハーフマラソンを完走。(2014年6月)

若い頃は、クリスマスイブも夜中まで職場にいるような生活でした。アフリカのコンゴ民主共和国で、PKO(国連平和維持活動)の仕事をしていたある日のこと。ゲリラ兵たちに武装勢力から除隊して本国に帰るよう促したら、その中の一人に、「俺が兵士を辞めて国に帰ったら、どんな暮らしが待っている?」と聞かれ、うまく答えられませんでした。私自身、仕事以外に、家族や友人との時間も持ってリフレッシュできるような「普通の」暮らしを忘れかけていたのです。自分の中の「愛情タンク」、「エネルギータンク」が、空の状態。自身が満たされていなければ、他人のことは思いやれません。以来、ワークライフバランスを保つことを、とても大事にしています。

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小山さんを通じて、国連を少し知って頂けたでしょうか?住む世界の違うエリートなのでは、と敬遠してしまいそうですが、素顔の彼女は下町育ちの超庶民派で、とても面白い方ですよ!「ちなみにミモレ、白髪とのつき合い方とか、ガチで参考にしています。」(ご本人談)

小山さんの経歴やお仕事について、もっと知りたい方は、こちらから。(ILO駐日事務所HPインタビュー記事へリンクします)