元競泳日本代表の伊藤華英さんが、毎回さまざまなゲストと「女性アスリートの生理問題」について語り合うYouTube番組『TALK UP!1252』。

この日のゲストは、元バドミントン日本代表の潮田玲子さん。
現役当時は、ダブルスのペアを組んでいた小椋久美子選手とともに“オグシオ”として多くのファンを魅了し、バドミントン人気を牽引。
北京オリンピック、ロンドンオリンピックと2大会連続出場を果たすなど大活躍されました。

そんな潮田さんは、当時としては珍しく、生理をピルでコントロールされていたそう。
今回は、その貴重な体験談を中心に、男性指導者へのアドバイスなどもお話しくださいました。

 


産婦人科への先入観が
ピル継続の意外な障壁に


伊藤さん(以下、敬称略):潮田さんは、現役時代にピルを服用されていたそうですね。それには、何かきっかけがあったのですか?

潮田さん(以下、敬称略):きっかけは、2007年の世界選手権でした。2008年がオリンピックイヤーでしたが、バドミントンでは、その前年に行われる世界選手権が代表選抜に関わる重要なレースとなります。
生理に煩わされない方法をドクターに相談したところ、ピルでずらすことを提案して頂いたんです。

 

伊藤:なるほど。生理中はパフォーマンスにどんな影響が出ていましたか?

潮田:ひとつは、コートにいる時に漏れないか気になってしまうこと。
生理自体は重い方ではありませんでしたが、やはり2〜3日目は腹痛や腰痛があったので、大事な試合と重なるのは避けたいと思いました。

伊藤:実際にピルを服用されてみて、効果はいかがでしたか?

潮田:世界選手権ではメダルを獲ることができたので、飲んでよかったと思いました。
ただ、副作用で体重が増加してしまい、服用開始から大会当日までの3ヶ月間は、食事制限や体重を落とすためのトレーニングなど、結構大変でしたね。

伊藤:最初にピルを提案された時、抵抗はありましたか?

潮田:それは、かなりありました。当時23歳でしたが、それまで「ピル=避妊薬」だと思っていたので。
生理をコントロールできる薬だと知り、まずそのことに驚きました。それに、産婦人科は妊娠したら行く場所というイメージがあったので、病院に薬をもらいに行く姿をあまり人に見られたくないな、と。

ちょうど“オグシオ”として注目され、私生活までカメラに追われていた時期だったこともあり、堂々と通いにくい感じがあって。
そんな気持ちもあったので、だんだん通院から足が遠のいてしまい、効果を感じてはいたのですが、大会後は、長くは続けられませんでした。

写真:築田純/アフロスポーツ

伊藤:それは億劫になってしまいますね。でも、ということは、当時、周囲には、他にピルを服用されている方はいらっしゃらなかったのでしょうか?

潮田:いらしたのかもしれませんが、そういう話はしませんでした。
どなたかもっと早く教えてくれる方がいらっしゃるとよかったのですが。

伊藤:そうですよね。当時は、本当に誰も教えてくれないから、自分から調べて気づかないと知ることができない状況がありました。
今後、女性アスリートのコンディションを上げていくためにも、チーム内で生理について話せるようになることは、重要だと思いますか?

潮田:もちろん、めちゃくちゃ重要だと思います!
そのためには、選手自身の意識改革も必要ですし、指導者の理解も不可欠。

生理の話が当たり前にできるようになればピルなどの知識もシェアできますし、生理にまつわる不調が認識されるようになれば「周囲に迷惑を掛けてしまう」という精神面でのストレスも緩和できます。
また、練習への影響という点でも、生理周期を上手くメニューに取り入れられたら、パフォーマンスの向上に繋がるはず。スポーツ界には、今後ぜひ、そんな取り組みを進めてほしいですね。

伊藤:これまで、トレーニングメニューは、男性選手のやり方を右に倣えでやってきましたからね。
女性の身体のメカニズムに合わせたメニューを取り入れていく必要性を感じますね。

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“オグシオ”コンビとして大活躍した現役時代
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1 写真:ロイター/アフロ
2 写真:AP/アフロ
3〜4 写真:築田純/アフロスポーツ
5〜7 写真:アフロスポーツ

 
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