自分が教えてもらえなかったことを、子どもに教えようとするのは、なかなか難しいことですよね。たとえそれが、女性にとっては身近な「生理」に関することであっても、どんな言葉で、どんな風に子どもに伝えるべきか、迷っている方も少なくないかもしれません。筆者も子どもの頃、「生理」について家族に相談することはほとんどなかったと記憶しています。家庭で「生理」や「月経」という言葉を聞くこと自体がなく、「これは口にしてはいけないことなのでは」という勝手な先入観があったのだと思います。

ですが、筆者のような現在の親世代が育った頃と比べても、生理をとりまく環境は大きく変化。生理用品の種類は増え、痛みへの対処法も「鎮痛剤」一択から様々な方法が広く知られるようになりました。子どもが自分の生理に疑問を持った時、「これを試してみたいな」「生理痛をなんとかしたい」と気軽に相談してもらうためにも、普段からなるべく親子で「生理」についてオープンにできたらいいですよね。

性教育サイト「命育(めいいく)」の代表を務める宮原由紀さんは、著書『子どもと性の話、はじめませんか? からだ・性・防犯・ネットリテラシーの「伝え方」』の中で、親から子へ「生理」をどのように共有すればいいかを具体的に教えてくれます。そこで今回は本書から、初経を迎える“児童期”と、生理の不調が生まれやすい“思春期”の子を持つ保護者から寄せられた、生理にまつわるQ&Aを抜粋してご紹介。親子で「生理のはなし」をする際に、ぜひ参考にしてみてください。

 

お子さんや身近な子どもたちから「赤ちゃんって、どこからくるの?」と聞かれたら、うまく答える自信はありますか?

保護者向けの性教育サイト「命育(めいいく)」の制作を始めた2018年以来、私はさまざまな場面でこの質問をしてきました。そして多くの人たちが、この質問をしたときに気まずそうな表情をします。

 

実際、私たちが定期的に実施している性教育に関するアンケート調査では、「性教育に自信がありますか?」という質問に対して、毎回80%程度の人が「性教育に自信がない/あまり自信がない」と答えています(ほかの設問は「どちらともいえない/おそらく問題ない/自信がある」)。

保護者自身が十分な性教育を受けてこなかったために、性に関する知識が乏しく、子どもに「何をどう伝えたらいいのかわからない」という人が多いのでしょう。また、「性教育は学校で教わるもの」であり、「家庭で教えるものではない」と思っている人も少なくありません。

しかし、いまの日本では、ほんの数時間しか性教育に時間を割いていない学校が多いのが現状です。

「学習指導要領」(平成29・30年改訂)によると、初経(はじめての生理)や精通(はじめての射精)など、思春期に男女の体に生じる変化について学ぶのは小学校4年生。このときは、男女一緒に学びます。その後、5年生になると、男女で分かれて生理用品の使い方や体の変化に基づく悩みについて、より丁寧な指導が行われます。

しかし、日本産婦人科医会によると、初経を迎える年齢は10歳〜14歳ごろのため、学校任せにしていると、何も知らないまま初経を迎えてしまうことも。また、初経について教わっていたとしても、自分ごとと受け止めていない場合は、突然の経血や生理に伴う諸症状などに、子どもがパニックになってしまうケースも実際、耳にします。