パラダイムシフトの今、「美の価値観」を刷新し続けてきた美容ジャーナリスト齋藤 薫さんが、注目したいある視点をピックアップします。

 

49歳は、魔の時なのか?


世界規模で行われた幸福度調査(*1)で、年齢別の幸福度を聞いたところ「いちばん不幸感が高い」という結果になったのが、じつは49歳。全く別の調査でも、49歳の幸福度が低いことが明らかになっています。でもなぜ49歳?

(*1)全米経済研究所(NBER)が発表した、米ダートマス大学のデービッド・ブランチフラワー教授の論文「人生の幸福度と年齢の関係」によると、人生における幸福感が最も薄れるのは先進国で47.2歳、発展途上国で48.2歳となった。日本では49歳という結果に。

ちなみにそれは、不幸感を感じる平均値では無く、「49歳」を名指しして、この時いちばん不幸だったと語る人が多いということ。私自身、この結果には深く納得しました。何を隠そう、自分も50代目前、まさに49歳の時に非常に苦しんだからなのです。
思えば、当時同年代の友人とも、この年齢って本当にしんどいねという話をしたことがありました。だから、あまりの合致に、アンケート結果を見たとき、何だか鳥肌が立つ気がしたほど。

そうしたことも重ね合わせると、何かそこには深い訳がありそうで。49歳に一体何が起きると言うのでしょう、49歳は魔の時なのでしょうか?

 

まず、この頃まさしく更年期が訪れるわけで、これが原因の1つなのは疑いようがありません。つまり50代に向け、体の不調と心の不安定が同時に訪れる。なのにそれらが、“更年期のせい”という確信は、その場ではなかなか持てないからこそ、余計に不安になるという仕組み。それ自体が不幸感につながっているのは確かなのです。

実際に更年期には、ほんの些細な事でもいちいち不安になり、それが時に病的になることすらあります。
どちらかといえば楽観主義で、夜も“バタンキュー”、眠れないことなどほとんどなかった自分が、なかなか寝付かれずに毎夜毎夜苦しみ、精神的に疲れてしまったのが、ちょうどこの時期でした。

人間、眠れずに暗闇を見つめて悶々とする時にこそ、最も大きなストレスを感じます。なぜなら眠れない夜ほど、悪いことばかりを思い出し、昔の悩みをわざわざ引っ張り出してわざわざ悩むという時間に当てがちだから。

解決しようのない悩みをこねくり回す時ほど、深い苦悩を感じる時はありません。これに加えて、眠ろうと焦れば焦るほど、余計に眠れなくなるという苦悩が加わって、一時的にでも心身が最悪の状態に置かれます。そういう時間を自ら作り、辛い夜を繰り返す更年期の初期だからこそ、49歳は不幸感がとりわけ強くなるのかもしれません。