お悩み2「つらい経験をし、介護職を続けていくことを不安に感じています」


続いては、介護職をしているという女性からのお悩み。

「私は20年以上、介護職をしていますが、先日、自分がある方の排泄介助をしているときに、その方が脳梗塞のような症状を起こして、意識をなくされてしまったんです。今までは、自分が直接介護をしているときに意識をなくされてしまったというような経験はありませんでした。楽しく続けていた仕事だったのに、でもその出来事があって以来、急に自信がなくなって、私、この仕事、続けていけるだろうか、続けていけないかもしれないと思うようになってしまって……。お医者さんである高尾先生は、そういう経験をされていらっしゃると思うので、どんなふうに心を保てばいいかお伺いしたく思いました」

質問者のお話にじっと耳を傾ける高尾先生。

そんなお悩みに対して高尾先生からこんな回答が。

 

「それは、つらい経験でしたね。まずひとつ言えることは、排泄のときは体の変化が起きやすく、血圧が大きく変化するので、脳や心臓などに何か問題が起こることはありえることです。ですから、今までたまたまそういうことがなかったかもしれないけれど、これからもあるかもしれない。しかもそれは、あなただけじゃなく、あなたの周りの介護士さんにも起こりうる出来事です。

あなたが自信をなくしてしまったという気持ちはすごくわかります。私たち産婦人科医の間でも赤ちゃんをなくしてしまうということもありますからね。
でも、医療職や介護職は、その人の人生そのものを支える仕事ですから、死というものが必ず訪れます。それがいつやってくるかは、私たち、誰にもわからないことです。もちろん、何か自分の不注意などで起こったことなら責任を感じなきゃいけませんが、でも、そうではなく起こったことなら、それは、その方(被介護者)の人生において、必ず起こるはずだったことと考えればいいと思います。

今後も自分が介護の仕事を続けていくかを考える際には、これから先、どれだけの人に貢献できるのかという考え方を持つことが大事なんじゃないかなと思います。そして今回、意識をなくされてしまったその方のことを心のどこかに持ち続けることは、きっとその方にとっても、その方のご家族にとってもうれしいことだと思いますし、あなたが今後も介護の仕事を続けることもうれしいことだと思っていただけるんじゃないかと思います。介護は貴重な仕事ですから、今回の出来事はひとつの経験として、そして周りの方達にも起こりうることとして知っていただいて、ぜひ続けてくださいね」

そんな高尾先生の力強く温かい言葉は、相談者の女性に限らず、会場の多くの女性の心に響き、トークイベントの最後には、大きな拍手が巻き起こりました。

イベントの終わりには、サイン本を一人一人にお渡し。


このように、いつも悩める女性たちに“大丈夫だよ”と背中を押す高尾先生。
新刊『大丈夫だよ 女性ホルモンと人生のお話111』(講談社)には、高尾先生からのお話が、たっぷり111も紹介されています。すべての女性、必読の1冊です。
 

<新刊紹介>
『大丈夫だよ 女性ホルモンと人生のお話111』

著:産婦人科医  高尾美穂
定価:本体1600円(税別) 講談社


ミモレの連載と書き下ろしで構成された高尾先生の書籍が発売になりました!

女性ホルモンに振り回される人生前半の40年と、ホルモンがなくなり落ち着く後半40年、そしてその間にある更年期という嵐の10年間。
自分がいま人生のどの時点にいて、体と心はどういう状況になっているのか。それが把握できていれば、対策はあるのです。
この本では、高尾先生が日常でできる解決策を教え、解決策がないことならば違う角度でのとらえ方を提案。また、女性がラクになる生き方のアドバイスもたっぷりと。
女性ホルモンとうまく付き合い、自分の人生を自分でデザインしていくために。
高尾先生が優しく語る111の「こうすれば大丈夫」を、ぜひ生きる指針にしてみてください。



取材・文/和田美穂
撮影/ミモレ編集部