ミモレ世代の方にもファン多数の「アソースメレ」とミモレストアがコラボしたカシミアシルク混の別注大判ストール。構想からおよそ1年、素材や織り、色合いにいたるまで、ミモレストアのために、いちから製作されたオリジナルのストールが完成しました。今回は、このスペシャルなストールの製作背景について、アソースメレの生産に携わっていらっしゃる長谷川拓朗さんにお話を伺いました。
ブランド初の“カシミアシルク混”ウール素材を採用
今回のコラボストールの特徴のひとつが「カシミア20%、シルク20%、ウール60%」という3種類の素材をミックスしたオリジナルの素材。カシミアシルク混素材でストールを製作するのは、アソースメレでも初めてだったそうです。
「アソースメレのストールは、ふわっとしていて、ラフに巻いてもサマになる程よいボリューム感が特徴です。生地の密度が通常のストールよりも洋服に近く、ふっくらしていて(洋服の密度を100とすると、45~50くらい。一般的なストールは30くらい)巻いた時にペタっとしないんです。洋服との合わせやすさ、コーディネートした時のバランスを意識して“洋服に近い感覚”で作られているのがオーセンティックなストールブランドとは異なるところだと思います。
カシミアの配合が多すぎるとボリュームが出ないし、シルクだけだと落ち感が出すぎてぺたっとしてしまう。そこで、今回カシミアシルク混素材を作るにあたり、3種の生地の混率から、糸の太さ、織りの密度など、何度も試作を重ねました」(長谷川さん)
ストールの絶妙な質感を生み出す、
富士吉田にある旧式のシャトル織機
アソースメレの丁寧なモノ作りに共感してくれている、パートナーである山梨県の富士吉田にある工場。その工場の日本にはもう数台しかない貴重な機械を使用して織っています。繊細な糸なので、糸切れしないよう通常よりゆっくりと時間をかけて織っていきます。ウールはニュージーランド、カシミアは内モンゴル、シルクは中国浙江省、と海外から原料を調達。コロナ禍も重なり、原料の調達にも時間を要したそうです(※機械が織っているのは別のストール生地になります)
「1台の機械で織れるのは、1日わずか4、5枚。工程数がとても多く手間がかかり、工場の方にとっても大変な作業です。そのぶん、大量生産される高速の織機では表現できない、素材の質感や風合いが生み出されます。今回お願いした工場をはじめ、富士吉田の工場は先代から事業継承された若い世代も多く活躍されていて、今までに作ったことのないものでも柔軟に対応してくれるんです」(長谷川さん)
3種類の素材を活かした作りで、
“3シーズン使えるストール”が実現!
ミモレストアからのオーダー“3シーズン使えるストール”を実現したのも、カシミアシルク混ウールに秘密があるようで……「ウールは毛羽立ちの少ない梳毛のウールを採用。カシミアもつるっとした梳毛(そもう)にすることで、なめらかで光沢があり、保温性がありながらも暖かくなりすぎず、毛玉になりにくい素材感に。シルクは温度や湿度を調整する機能があり、“天然のエアコン”とも呼ばれている素材。肌触りの良さと吸湿性をプラスしてくれる効果があり、防寒にも冷房対策にもぴったりな、長いシーズン使える素材が完成しました」(長谷川さん)
色出しが難しい、絶妙なニュアンスグレージュ
アソースメレでも今までにない色味という上品なグレージュカラー。染色は尾州の工場で行われました。色の配合も非常に繊細で難しく、気温や湿度によっても色味が変わってしまうそう。今回3種類の素材をミックスしたからこその光沢と発色により、グレー系でも顔が沈んで見えない絶妙な色合いに。洋服のテイストを選ばず、幅広いシーンで使えるカラーに仕上がりました。
ストールの新しい概念を打ち出したアソースメレ
2012年にデビューし、2018年にエディターの大谷繭子氏を迎えてリブランディングしたアソースメレ。当時はストールを巻く人が少なくなってきていたこともあり、はおりにも出来る大判サイズで、洋服のスタイリングに合うストール作りへとシフトしたそうです。アソースメレならではのボリューム感やカラーリングは、30〜50代の大人女性を中心に多くの支持を集めています。「3~5年はクローゼットの4番バッターでいてほしい、という想いで作っています」と長谷川さん。
アソースメレのさっと巻くだけでサマになるストールの秘密は、緻密に計算された丁寧なモノ作りがあってこそでした。
今回のミモレストアのためだけに作られたスペシャルなストールの素材感と色合い、ぜひ手に取って頂きたい自信作です。
取材・文/出原杏子