「前頭側頭型認知症」について、知っておきたいこと。原因は? 治療法は?


山田:「前頭側頭型認知症」の場合、人格の変化や問題行動が増えるものの、記憶力低下が起こるわけではないので、病気ではないと捉えられてしまうこともあります。その結果、社会的孤立を生むこともあります。

編集:なるほど……。たしかに、急にお酒を大量に飲みだした人を見ても、ストレスかな? と思うだけで、「認知症」と認識するのは難しいかもしれません。

 

山田:行動障害の他には、失語症を先に発症し、その後記憶力の障害が起こるパターンもありますね。

編集:ブルース・ウィリスさんが失語症が原因で引退された時、「医者のいらないラジオ」でも解説いただきましたよね。それにしても、行動障害や失語症は、認知症と結びつきにくい症状だと感じました。

山田:この病気の発症のピークは、50代後半と少し早く、その年代だと、余計に認知症と結びつきにくいかもしれません。実は病気の症状にも関わらず、場合によっては家族に見放されてしまう、離婚をされてしまう、といった状況になることがあります。

ですので、やはりこの病気に対する社会的な認知の広がりは、病気を発症される方を守る上で非常に大切なことです。ブルース・ウィリスさんのご家族は、この病名を広めるために診断の公表を決断されたそうですが、称賛に値する行動だと感じました。私たちも、できる範囲でこの病気の情報を届けたいですね。

編集:原因や治療法について、わかっていることはありますか?

山田:この病気の原因は、遺伝子異常などを含め、多岐にわたると考えられています。また、予防法や、有効な治療法は現時点では見つかっていません。運動や理学療法など、様々な方法で症状をなだらかにする、という管理がされています。有効な治療法の開発が望まれている病気の一つですね。

編集:なるほど……。私たちにできることは、身近な家族や友人が、急にお酒や甘いものを大量に摂取しだしたりした場合などに、「前頭側頭型認知症」である可能性を知っている、ということですよね。

山田:そうですね。高齢になって、突然そのような状態になることはやはり珍しいですし、ご本人は、病気であるという意識を欠く場合が多いことが知られています。そうした症状が「生活に支障をきたしている」という場合、やはり医療機関にご相談いただいた方がよいですね。

編集:わかりました。「前頭側頭型認知症」だけでなく、「認知症」全体への理解が、より深まりました。本日も、ありがとうございました!

ブルース・ウィリスが発症した「前頭側頭型認知症」とは?50代後半からの人格や行動の激変に注意【医師の解説】_img0

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構成/新里百合子
 

 


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