実験その④ 蟹の錯覚 自分の手と相手の手の区別がつかなくなる遊び
⓪ A4の紙を半分に折る。
① 交差した両手で紙の裏から持つ。
交差した手の一方が奥に、もう一方が手前となるようにして紙の縁を裏側からつかむ。左右の手がともに、4本指だけが見えている状態となることに注意。
② もう一人も同じく両手を交差させ、前後を互い違いにして持つ。
紙の空いているスペースを、対面する相手と互い違いになるようにして、同じ要領でつかむ。
③ 2人で指をわしゃわしゃしていると、
④ 自分の手と相手の手の区別がつかなくなる!
わしゃわしゃしているのをぼーっと見ていると、自分の手だと思っていたのが実は相手の手だったり、その逆に相手の手だと思っていたのが自分の手だったり、といった具合に、自分と相手の手の区別がつかなくなる。
【補足】紙のサイズは大きくても小さくても構わないが、4本の手の距離が近いほど混乱の度合いが高まる。ただ紙をつかんでいるだけで混乱してしまう人もいる。混乱する感覚がうまくつかめない人は、目を細めて意識的に視覚の解像度を落としてみると、感じがつかみやすい。典型的には、自分の手が左右に並んでいるように錯覚することが多い。
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これらの奇妙な実験で「からだの錯覚」を感じられたでしょうか。
本書では、「スライムハンド錯覚」「ダブルタッチ錯覚」「セルフタッチ錯覚」など、各実験の錯覚に関する解説がされています。
著者プロフィール
小鷹 研理(こだか・けんり)
名古屋市立大学芸術工学研究科准教授。工学博士。
2003年京都大学総合人間学部卒業。京都大学大学院情報学研究科、IAMAS、早稲田大学WABOT-HOUSE研究所を経て、2012年より現職。野島久雄賞(認知科学会)、Best XR Content Award(ACM Siggraph Asia)、世界錯覚コンテスト入賞(2019-2021)など多数受賞。
『からだの錯覚 脳と感覚が作り出す不思議な世界』
小鷹 研理 講談社 1100円(税込)
「からだの錯覚」を通して人の身体や脳の実態に迫る、認知科学研究者である著者が、からだに起こる不思議な現象を徹底解説。「自分」という、もっとも身近にありながら、つかみどころのないもののイメージが、脳や五感などによってどんなしくみで作られているのかが語られていくと共に、錯覚を感じるさまざまな方法も紹介しています。読者も簡単な方法で、不思議な錯覚の世界を体験できますよ。
構成/大槻由実子
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