民法によって大人とみなされる年齢が、2022年4月1日より、20歳から「18歳」になりました。法律上で成人になれば、当然さまざまな責任も生じることになります。とはいえ、成人になってから一気に社会のルールを理解するのは、容易いことではありません。そこで、大人になる子どもたちが無用なトラブルに巻き込まれないためにも、早いうちから触れておきたいのが「民法」についてです。

「嘘をついた買い物」は未成年でも取り消せない!? 子どものうちから学びたい、私たちの身を守る「民法」_img0
 

司法書士の岡 信太郎さんの著書『もうすぐ大人になる君が知っておくべき 13歳からの民法』は、学校、友達、SNS、家族など、日常でよくある困りごとを元にしながら、私たちの生活がどのような民法で守られているのかを教える内容。困ったり、迷ったりしたときにどう判断すればいいか、子ども目線でやさしく解説する本書から、今回は親世代も過去に経験している!? かもしれないシチュエーションにまつわるルールをQ&A形式でご紹介します!

 

「ものの貸し借り」について知っておきたいルール

Q. 友達から借りた本をなくしてしまった……!

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学校の宿題で自主学習が出ました。今回は動物の生態について発表しようと思い、動物のことが詳しく載っている本を友達から借りて調べていました。その後、友達には調べ終わったらちゃんと返すと約束していたのに、いざ返そうとしたら本が見当たりません。どこかでなくしてしまったようで、学校や家を捜さがしても見つからず……。こんなとき、どうすればいいのでしょうか?

A. 借りたものは返す「責任」があります


友達から何か物を借りたら、借りた人には物をなくしたり傷つけたりしないようにする責任が生じます。今回のケースのように、わざとではないにしても、なくしてしまったり、ひどく汚したりして返すことができなくなった場合には、その責任を果たせなかったことになります。これを「債務不履行(さいむふりこう)」といいます。

その後の対応としては、同じ商品を買って返すか、商品を買えるお金を支払うことが考えられます。これを「損害賠償(そんがいばいしょう)」といいます。それだけ、借りたものは大事に扱わなければいけないのです。いずれにしても、どうしてなくしてしまったのか、事情をちゃんと友達や君の両親に説明することが大切です。

*関連する民法は……第415条【債務不履行による損害賠償】

Q. 友達が無断で僕のもので遊び始めた……

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この前、ドローン練習場に行ってドローンを飛ばしていたら、たまたま遊びに来ていたクラスの友達が、「それ、いいな」と言って見ていました。僕がトイレに行って戻ると、友達が勝手にリモコンを使って「俺のものは俺のもの。君のものも俺のもの」とふざけながら遊んでいました!

A. 「所有権」は君にあるのでダメ!


物を自分のものとする権利のことを「所有権(しょゆうけん)」といいます。この所有権には、いろいろな権利が含まれていて、その一つが「物を持っている人だけが自由に使える」という権利です。

今回のケースでは、友達がドローンを君の許可なく勝手に使っているので、君の所有権を踏みにじっていることになります。だから当然「返して」と言えますし、もし壊すようなことになったら、弁償を求めることができます。「君のものは俺のもの」という友達の考え方は、民法の原則からして通用しないことを覚えておきましょう。

*関連する民法は……第206条【所有権の内容】