「ぜんぶ、息子が導いてくれた」


「今は週に2回ほど息子に会いに病院に通っています。母として息子にできることは何でもしてあげたいし、彼はかけがえのない存在。でもこうして離れてみると、いつも一緒にいるだけがすべてではないとも思いました。

息子は今、入院生活をするしか選択肢はなく、経過観察しかできません。でも私はやるべきこと、できることはたくさんあるので、目の前のことをしっかりこなすようにしています」

知里さんの仕事はかなり順調で、また他にも知人の縁で風水の資格をとり、風水鑑定士としての活動も始めました。好奇心旺盛で前向きな性格はどんな状況でも変わらず、最近は事業の拡大に伴い、会社も設立したそうです。

様々な逆境の中、知里さんの強さ、行動力には感服してしまいますが、印象的なのは、どんな困難に直面したとしても必ずそれを糧に成長していること。人はその気にさえなれば、こんなふうに成長を遂げられるというお手本を見ているような気持ちです。

「何かが起きたときは、『今、私は試されているんだ』と思うんです。あとは、やっぱり守るものがあるからできる。やるしかないと思うし、逆に息子に守られているから、できないわけがないという気持ちになります」

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「それに今思えば、元夫はすごくいい人でした。というのも、彼はこれまで1日たりとも私が設定した養育費の振込を忘れたことはないし、月1回必ず東京に来て息子に面会します。他のシングルマザーの話もよく聞きますが、酷い話もたくさんあるので、彼は根がいい人なんだと思います。実際、今は何でも話せる友達のようになっています」

 

我が子の幼児期に何年も浮気を繰り返した夫へのセリフとは思えませんでしたが、知里さんは心からそう思っているよう。彼女の強さの秘訣は、ネガティブな感情に執着せず、物事の良い面を素直に受け入れ、感謝できる能力なのかもしれません。

「障害児ママやシングルマザーは、現実的にハンディキャップがあると思います。でも、だからと言って自分のやりたいこと、望むライフスタイルを諦める必要はないはず。息子がいるからできない、自由になれないと、昔は思っていました。もうぜんぶ投げ出したいと思ったことも何度もあります。そんな感情も人間なら当たり前だと思います。

でも、『こうなりたい』と目標を強く設定すれば、やるべきことは自然と見えてくるはずだし、小さくても少しずつ行動を重ねれば、状況は必ず変わります。

むしろ私は、守りたいものが強いほど強くなれることがわかりました。東京に住んで会社を経営する……なんて、地方の専業主婦だった頃からは考えられない今の環境を手に入れられたのは、何だかんだ息子のおかげです。子どもはお母さんの味方だと思います。ぜんぶ、息子が導いてくれたんです」

そう語る知里さんの笑顔は本当に美しく、2人が強い絆で結ばれていることを改めて実感しました。

知里さんが仰っていた通り、真斗くんは知里さんを選んで産まれてきて、お母さんを応援し、守り続けているのかもしれません。

貴重なお話をシェアいただき、心から感謝いたします。
 

写真/Shutterstock
取材・文・構成/山本理沙
 

 

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