今回ミモレストアで初めてご紹介させていただく、版画家・平澤まりこさんの作品。プライベートでも親交の深いバイイングディレクター福田麻琴さんのラブコールで、平澤さんのアイコンとも言える“馬”そして“天使と鳥”のモチーフの線画作品をお取り扱いさせていただくことになりました。

平澤まりこさんといえば、柔らかな色彩が美しい版画も有名ですが、近年「オイルバー」と呼ばれるスティック状に油絵の具を固めた画材で描く線画も、多数製作されています。今回は福田さんご自身も自宅に飾られているという、平澤さんのドローイング2作品のご紹介となります。自宅のインテリアにすっと馴染む柔らかな雰囲気と前向きになれる明るさをもつモチーフ。その詳細をご紹介させていただきます。

滑らかで心地よいタッチ
オイルバーで描かれたドローイング

平澤さん愛用の「ウィンザー&ニュートン」というイギリスの画材メーカーのオイルバー。油絵の具をスティック状にして固めています。

「版画を始めてから『ドローイングも描いてみよう』となったときに、工房で見かけて初めて使ったのがオイルバーとの出会いでした。当初は版画の製作時のように透明のフィルムにこれで描いたものを転写していたのですが、そのうち『紙に直接描くのもかっこいいのでは』と思い、今のスタイルに。油絵の具の持つ独特の風合いも美しく、曲線も滑らかで、すごく伸びやかに描けるんです」(平澤さん)

羽の生えた馬をモチーフにした作品

「天使になった馬」

平澤まりこさん線画「天使になった馬」¥48800/mi-molletSTORE 
サイズ:(内寸法)379mm×288mm 額装:オーク材 ジークレー印刷※限定エディションナンバー入り

近年の平澤まりこさんの生み出す作品の中で最も多く描かれている「馬」のモチーフ。平澤さんご自身も“たくさんのご縁を繋いでくれる存在”という馬を題材に、オイルバーの滑らかな曲線で描いていただいた作品です。
作品名となっている「天使になった馬」は、“羽の生えた馬”という平澤さんの作品の中でもたびたび登場するモチーフ。馬の持つ優しくも崇高なイメージの中に、“羽を持つ”という自由で明るい軽やかさが感じられます。

「オイルバーの滑らかなタッチが、馬のフォルムを描くのにぴったり」だという平澤さん。今回のジークレー印刷では、クレヨンのようなスティック状になったオイルバーで描いた時に出る、カスレといった繊細なタッチもそのまま残っています。また、たてがみと尻尾部分のゴールドの色味も忠実に再現されています。

天使と鳥をモチーフにした作品

「愉しい会話」

平澤まりこさん線画「愉しい会話」¥48800/mi-molletSTORE サイズ:(内寸法)379mm×288mm 額装:オーク材 ジークレー印刷※限定エディションナンバー入り

今回「天使になった馬」と同時に製作をお願いしたのが、天使と鳥をモチーフにしたこちらの作品。平澤さんの作品中でもたびたび登場する“天使と鳥”は、幸運を運んできてくれるメッセンジャー的な存在です。
その2つのモチーフが描かれたこちらの作品名は「愉しい会話」。どんなおしゃべりなのか、想像するのも楽しい、明るさに満ちた1枚です。

ゴールドで描かれた天使の輪も。
こちらには鳥の巣が金の細い線で描かれています。


柔らかなアイボリーの質感がお部屋を優しい印象に

額装は平澤さんがいつもお願いしている目黒区にある額装屋さんの「ニュートン」に依頼。アイボリーの紙の優しい色みに合わせて、マット部分もアイボリーにし、枠はオーク材の太子版、素地仕上げでお届けいたします。アクリル部分にもUV加工がされています。

今回はオイルバーで描かれた絵を「ジークレー印刷」といういつもの版画とはまた違うプリント技術により、高い再現性を持って印刷しました。ジークレー印刷とは、多色の顔料インクとアート向けの専用高級紙を使用する、シルクスクリーンやリトグラフに代わり近年増えてきている高品質な印刷です。長期の耐光性を実現し、紫外線による経年劣化がしにくいのも特徴。手刷りの版画に比べて、印刷機で刷るので価格的にも手にとっていただきやすく「まずは自宅に絵を1枚飾ってみよう」という方にもおすすめです。


エディションナンバー入りの限定販売

今回は2作品ともに限定枚数での販売を予定しており、作品ごとにエディションナンバーを入れてお届けいたします。

森の中のアトリエでの制作時間

平澤まりこさん/イラストレーター・版画家。セツ・モードセミナーを卒業後、装画や広告のほか、絵本の制作を手がけるなど多岐に渡り活動。またエッセイストとしても旅、食についての著書を多数刊行する。近年「描版画」という独自の表現方法により版画を手掛け、陶作家との共作による「陶彫画」とともに作品を発表している。今年6月には初の作品集『いつかの森』(求龍堂)を刊行。
平澤さんの軽井沢のアトリエで。森に囲まれた静かな環境の中、馬のモチーフのデッサン。

今回の撮影をさせていただいたのは、平澤さんの軽井沢のアトリエ。当日は平澤さんと愛犬のペッカが迎えてくれました。
「いまは軽井沢と東京の二拠点で過ごしています。軽井沢では制作をしたり、遊びに来てくれた友人とのんびり過ごしたり。最初は都会だけでなく、自然のあるところで過ごしたい、と考えてこちらにもアトリエを構えましたが、後から考えると乗馬ができるところが近くにあったり、馬も身近に感じられる環境でしたね。
朝、ペッカと家の近所を散歩をしていると、浅間山がどーんと目前に出てくる道があるんです。朝の空気も清々しくて。この環境は、私自身の風通しもよくなるような、そんな場所ですね」

今回制作いただいた作品を平澤さんのアトリエに飾ると、まるで最初からそこにあったかのように馴染んでいました。素敵な飾り方についてお伺いすると、
「サイズ的に移動もとっても楽なので、例えば家の中の日差しの具合で場所を変えたり、季節ごとに好きな場所に移動していただくような飾り方もすごくいいなと思います。壁に掛けても、椅子やチェストの上に置いても、あとは本棚の中に置いてご自分の好きな小物と組みわせていただいても。暮らしのなかで自由に楽しんでいただけたら嬉しいです」とお話くださいました。

版画にも登場する馬や天使のモチーフ

平澤さんが今年出版された初の作品集『いつかの森』(求龍堂)。描版画74点、そして立体作品である「陶彫画」7点を掲載。

平澤さんが今年出版された作品集には、森に佇む神々しくも柔らかな馬や深い森の姿などが収められた、自然への深い眼差しが感じられる一冊です。なかには今回ご紹介させていただいた羽の生えた馬や天使、鳥といったモチーフも描かれています。

眺める人の心に柔らかな風が吹くような、心地よい感情を呼び起こしてくれる平澤まりこさんの絵。温かな風合いで、おうちのインテリアにも合わせやすい作品です。今回は限定数での販売となっています。ぜひこの機会にご検討くださいね。

撮影/前田一樹
構成・文/ミモレ編集部