今回ミモレストアで初めてご紹介させていただく、版画家・平澤まりこさんの作品。バイイングディレクター福田麻琴さんのラブコールで実現した、平澤さんのアイコンとも言える“馬”そして“天使と鳥”のモチーフの線画作品が出来上がった背景について、お話を伺いました。
福田麻琴さん(以下福田さん);以前からまりこさんとはプライベートで仲良くさせてもらっていて。はまじ(浜島直子さん)も含めて食事に行ったり、ベルリンを旅したり……そんな関係だったから、今回ミモレストアでご一緒できて、すっごく新鮮だった!
平澤まりこさん(以下平澤さん):本当に。付き合いは長いけれど、こうやって作品を一緒に制作したことはなかったよね。
福田さん:私はここ数年乗馬を始めたんだけれど、馬と触れ合うようになって、本当に癒されることが多くて。まりこさんの描くモチーフの中でも、やはり馬は特別な印象があるし、今回もぜひ馬のモチーフはお願いしたいなと思っていたから、素敵な作品に仕上がって本当に嬉しい。
馬はご縁を繋いでくれる存在
平澤さん:私にとっても馬は特別なモチーフかな。ここ数年、馬の絵を描くようになってから、不思議なくらい馬がいろんな人やご縁を繋いでくれるようになって。馬って、本当に美しい生き物だし、ビジュアルも内面も含めて心惹かれる存在。だから、気がつくとモチーフとして描いたり、集めてしまうことが増えてきているのかな。
福田さん:まりこさんが馬の絵を描くようになったのはここ数年なんだね。何か描くきっかけがあったの?
平澤さん:数年前に京都で個展をやらせてもらった時に「絵本をモチーフにしてみよう」と思い立って、その時は私の考えた『僕の馬は空を飛ぶ』っていうストーリーを元に描いたんです。馬と犬と郵便配達の男の人が出てるくるお話で。「願えば叶う」というのがテーマにあって、願っていたら、馬に羽が生えてくるの。それで犬も「どうしたら僕にも羽がはえるの?」って聞くんだけれど、馬は「とにかくイメージすればいいんだよ。自分が飛んでるイメージをしたら、本当に叶うよ」って。そして最後はみんなで月に行く……というお話を描いたときに"馬って他の動物とは違う何かがあるな”って思ったんです。
その後に版画の手法で描くことを始めたときに、やっぱりあのフォルム、曲線の美しさが版画の描き方にも合うなと思って、それ以降描くことが増えていった感じかな。
福田さん:なんて素敵なお話。まりこさんにとって馬はいろんな可能性を秘めているんだね。
平澤さん:そうだね。羽の生えていない馬もたくさん描くのだけれど、その中でもこれは“馬に羽が生える”っていう、みんなが「そんなことはあり得ないんじゃない」っていうようなことも「意外と軽やかにできちゃうよ」というイメージを持って描いてます。
福田さん:今回は馬と一緒に、天使と鳥のモチーフもセレクトさせていただいたのだけれど、これも「羽や翼を持っている」という共通点があるよね。
平澤さん:確かに、そうだね。その後の個展で版画だけでなくドローイングでも描いてみようとなったときに、今回も使っている「オイルバー」という油絵具のクレヨンのような画材を使って描いてみたの。そうしたらとっても好評をいただいて。私もすごく伸びやかに描けるし、曲線も滑らかで馬のお尻やフォルムとか、そういうのもぴったりだなと思って。それでどんどん馬をモチーフとして描いていたら、なんだかメッセンジャー的な感じがしてきて。それに付随して、天使だったり、みんなを良い方向に連れていってくれるっていう意味での鳥だったり、そういうモチーフが生まれてきたの。
福田さん:今回もベースになっているオイルバーは滑らかなタッチが私も大好き。スッと惹き込まれるような心地よさがあるよね。そして天使と鳥は幸運を運んでくれるメッセンジャー的な存在だから、見ていて幸せな気持ちになれるのかな。
平澤さん:私は毎回作品にタイトルをつけているんだけれど、この天使と鳥を描いた作品のタイトルは「愉しい会話」というの。
福田さん:愉しい会話! いったいどんなお話をしているんだろう……考えるのも楽しいね。
平澤さん:そんなふうに、絵を飾ってくださる人が、それぞれのイメージを広げて、そこに物語ができるのがすごいなって思っていて。個展で気に入って買ってくださった方が、次にお会いした時に、それを飾ったらどういう変化が自分の中にあったか、みたいなお話をしてくださるんですけど、大体みなさん共通しておっしゃるのは「絵が家族の一員みたいになって、そこの場の空気がすごく軽やかになった」って。
福田さん:わかる気がする! 私もまりこさんの馬のモチーフの線画を自宅の玄関に飾っているけれど、出かける時は元気をもらえるし、帰ってきた時は絵を見ると「あぁ帰ってきたな」ってホッとするの。
平澤さん:ありがとう。そう感じてもらえて嬉しい。やっぱりみなさんお守り的な感じで飾ってくださるのかな、と思うことがあって。だったらやっぱり私自身がきちんと整っておかないと、というのは日々意識しています。軽井沢のアトリエに来て、深呼吸して、今日の制作に取り掛かるとか、私自身の風通しもいつも良くするように気をつけています。
福田さん:そっか、まりこさんの絵からは透き通った空気感や包みこまれるような優しさが感じられるから、だからこんなにもホッとするのかな。特に今回の線画は、前向きな明るさがあるし、あまり絵を飾ったことがない、という方にも飾ってもらいやすいのかな、と思ってます。しかも、今回まりこさんにはジークレー印刷、といういつもの版画とはまた違うプリント製法でお願いしたんですよね! 手刷りの版画に比べて、印刷機で刷るので価格的にも手にとってもらいやすいですし「まずは自宅に絵を1枚飾ってみよう」という方にもおすすめです。
平澤さん:ジークレー印刷は、美術館にも飾れるクオリティの印刷と呼ばれているんですよね。実際、今回使ったオイルバー(スティック状の油絵の具)の線画のタッチだったり、ゴールドのニュアンスも美しく再現できました。UVカットもしっかり出来ているので、経年劣化を気にせずに長く楽しんでいただけると思います。額装はいつもお願いしているところに依頼して、アイボリーの紙の優しい色みに合わせて、マット部分もアイボリーにしてもらいました。温かな風合いなので、おうちのインテリアにも合わせてもらいやすいのかなと思います。
福田さん:本当に1枚で飾っても良いし、2枚並べても、そして今ある絵に混ぜてもすごく飾りやすいと思う。サイズ感も大きすぎないので、自分の家に置いたらどうかなっていうイメージがしやすいし、インテリアとも喧嘩しない。何より、まりこさんの絵には見ていて気持ちが前向きになれるパワーがあるから、ぜひ日々目に入る場所に飾って、楽しんでいただけたら、と思います。
ミモレストアで購入できる平澤まりこさんの作品
羽の生えた馬のモチーフ
作品①「天使になった馬」
天使と鳥のモチーフ
作品②「愉しい会話」
オイルバーで描かれた絵をジークレー印刷という印刷技術によって高い再現性を持って印刷した今回の作品。ジークレー印刷とは、多色の顔料インクとアート向けの専用高級紙を使用する、シルクスクリーンやリトグラフに代わり近年増えてきている高品質な印刷です。長期の耐光性を実現し、変色しにくいのも特徴。額装は平澤さんが個展でいつもお世話になっている額装屋「ニュートン」にお願いし、オーク材の太子版、素地仕上げでお届けします。すべてに平澤さんによるエディションナンバー入りです。
いかがでしたでしょうか。版画家・平澤まりこさんの絵は、見ていると気持ちが明るくなるような存在。通常の版画は敷居が高くて……という方にも、自宅で絵を飾ることを楽しんでいただけるよう、ジークレー印刷という試みでのお願いをし、今回のコラボレーションが実現しました。
こちらは共に枚数限定での販売になります。気になった方はぜひチェックしてみてくださいね。
構成・文/ミモレ編集部