「本当は夫と一番……」

伽奈さんが決めたルールは、自分が既婚者であり、離婚するつもりがないことを告げること、同時に複数のひとと関係をもって「恋愛」にならないようにすること、そして絶対に夫に具体的な気配を感じさせないこと、でした。

どんなお題目を唱えても、伽奈さんが婚姻関係を継続している以上、不倫なので、擁護することはできません。しかし同時に、これはご夫婦の問題。非難するのも筋違いということになります。

 

その後、すでに10年近く、伽奈さんは家庭の外で性欲を解消しています。しかし、その間には、相手の男性が本気になってしまい、離婚を迫ってくることが何回もあったといいます。

 

「もうこんな肉欲に他人を巻き込むならば、お金を払ってプロの男性のところに行くべきですよね。そう思いながら、途切れないことを言い訳に、手近なところで済ませているということになります。なぜ、こんなに年下の男性が寄ってきてくれるのか……。

そんな場合じゃないだろってつっこまれるのを承知で申し上げますが、今の若い男の子は寂しくて疲れているひとが多いんじゃないかと思います。

時代の閉塞感や上がらない賃金、少子化、大人の責任、多様性……いろいろ考えるべきことが20代・30代にのしかかっていて、繊細で真面目な一部の男性はそのことに疲れ、元気をなくしています。

加えて結婚して負うべき責任、仕事のプレッシャー、何者かにならなければいけないという焦燥感……。それを突き付けてこない私のような40代の既婚女性、しかも図々しいですが受け入れてくれそうな女に安らぎを感じているんでしょう。

セックスについても、多分……私はとっても感謝しているし、もう次はないかもしれないからこの機会を大事にしようと思っているので、それが伝わっているのかも。相手の男性を評価したり、一方的に受け身になったりすることがないので、きっと気が楽なんだと思います。

モテてるわけじゃないんです。それだけ皆さん、寂しくてしんどいんだと思います。孤独と恐れから、逃げたい気持ちに私が合致する。そして心身を受け入れられたと感じると、ひとは理屈じゃなく幸せを感じてしまう。不倫しておいてこんな言葉は偽善だとわかっていますが」

伽奈さんのゆっくりとした口調で語られる内容は、シビアでした。

果たしてこの夫婦関係は、成立しているのでしょうか? 実際にこれまでやってきているので、部外者がどうこう論じる必要はないのでしょうか。

夫とずっと一緒にいるために他人を利用しているのだと、伽奈さんは目を伏せました。早く性欲がなくなればいいのに、とも。その言葉をしらじらしいと感じるひとがいるのは当然です。取材中にかける言葉はなく、筆者も浩司さんのことを思うと良くないことだという気持ちが残りました。しかし、ほかに解決策が見つからないのも事実です。

夫婦関係には、いろいろなファクターが含まれているのだと改めて考えさせられました。

精神的な結びつき、セックス、情愛、家族として助け合うこと、不測の事態のセイフティネット、老後の助け合い……。パーフェクトに満たしている夫婦がどれほど稀かは、皆さんもご存知だと思います。

「本当は夫と一番、寝たいんです」と目を伏せた伽奈さん。

いびつながら愛の形か、ただの裏切りか。人間関係、そして夫婦の正解とは何だろう。そんなことを考えた、答えのない取材でした。

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写真/Shutterstock
取材・文/佐野倫子
構成/山本理沙
 

 

 

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