名セリフを紡ぎ出す韓国ドラマ作家の名手と言えば、パク・ヘヨンさんでしょう。「私の解放日誌」をはじめ、ゼロから作り出した物語の数々が国境を超えて日本でも愛されています。パク・ヘヨンさんが描く登場人物たちの心の機微は不思議と自分ごとにさせる力があるのです。どんな想いでドラマ作品を手掛けているのか、ご本人に聞きました。
「自分の中にある渇望」から作品を生み出す
韓国を代表するドラマ作家の1人、パク・ヘヨンさんの代表作と言えば、「また!? オ・ヘヨン~僕が愛した未来〜」「マイ・ディアミスター 〜私のおじさんから」「私の解放日誌」などがあります。原作のないオリジナルで作られた作品です。
韓国のJTBCで2022年4月期に放送、Netflixでも2022年4月から配信開始され、現在もNetflixで独占配信中の「私の解放日誌」は、ソウル郊外の京畿道(キョンキド)に住みながら、ソウル都心部で働く3きょうだいを主人公にした話。実はパク・ヘヨンさん自身も49年間、京畿道に住み、ソウル都心部まで往復する日々を続けてきたそう。「もうこれ以上、ソウルまで通勤するのは無理かもしれない」と思った時に書き始めたのが「私の解放日誌」だったのです。
さらに「解放」を求める気持ちを掘り下げていったパク・ヘヨンさんはこのように語っています。
「当時の私の悩みは、特にこれといって不幸な理由は1つもないのに、全く幸せだと感じることができないことでした。なぜこうなんだろう。どこで疲れて、冷淡になってしまったのか。その理由を見つけ出したかったのです。だから、『私の解放日誌』では、裏切りとか、陰謀、誤解などよくあるドラマの設定はすべて排除して、そういったことが全くない人たちですら、なぜ幸せではないのか、その理由を探していく過程について書きました」
自己を見つめるなかで作品を生み出すことが、パク・ヘヨンさんのスタイルなのかもしれません。「わたしは私自身の渇望に意識を向けています」と潔く言い表してもいます。劇中では実際、3人きょうだいの末っ子ミジョン(キム・ジウォン)、一番上の長女ギジョン(イエル)、2番目長男のチャンヒ(イ・ミンギ)のそれぞれが自身の不甲斐なさに苦しみながら、徐々に解放されていく姿が静かにゆっくりと描かれ、心の景色が変わる様子が手に取るようにわかる面白さがあります。
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