「私もごく普通の人なんです」


これらの作品づくりの過程については、パク・ヘヨンさんが2023年12月3~5日に石川県七尾市で開催された国際会議「第16回アジアテレビドラマカンファレンス」で登壇した時の言葉です。パク・ヘヨンさんが作り出す登場人物たちが身近に感じる理由にも感じられ、会場で直接お話を伺う機会も得ました。

韓ドラ「私の解放日誌」脚本家が語る、“普通の人々”を描くということ「不幸な理由は一つもないのに、幸せだと感じられない。その理由を見つけたかった」_img0
「第16回アジアテレビドラマカンファレンス」に登壇したパク・ヘヨン氏。

すると、「私もごく普通の人なんですよ」と、落ち着いた声で話し始めてくれました。

「私自身がそうだから、物語の登場人物も平凡。特殊な人はそう登場しません。私も無気力な時があって、日常から活力を得たいと日頃から思っています。だからやっぱり、平凡なキャラクターから影響をもたらすことができる、そんな物語を描いています」

飾らない人柄であることが伝わってくると同時に、パク・ヘヨンさんの信念も感じます。「私の解放日誌」のミジョンたちの変化が腑に落ちるのは、魔法にかけられるようなそんな単純なやり方ではないからです。パク・ヘヨンさん自身さんの言葉からもわかります。

「宝くじに当たったり、出世したりして、登場人物がパワーを得るのは自分からすると面白くないと思っています。嘘くさくもあって。人が本当に活力を得る時は、そういうことではないはずです。どこから力が出てくるのかというと、それは自分の根源であって、それを持ち続けることが力になるとわたしは思います」

 

名ゼリフ『私を崇めて』に込めた意味


しかも、登場人物の強さとなる根源を印象に残るフレーズ1つで完結させているのはパク・ヘヨンさんの力量とも言えるものです。「私の解放日誌」の中で最も印象に残る『愛だけじゃダメ、私を崇めて』という台詞はまさにそれ。ミジョンがク氏(ソン・ソック)に放ったこの言葉の意味も説明してくれました。

韓ドラ「私の解放日誌」脚本家が語る、“普通の人々”を描くということ「不幸な理由は一つもないのに、幸せだと感じられない。その理由を見つけたかった」_img1
Netflixシリーズ「私の解放日誌」独占配信中

「人によっては、ミジョンに息苦しさを感じる場合もあるかもしれませんが、わたしは、彼女は強いと思っています。ク氏に向かってミジョンが『愛だけじゃダメ、私を崇めて』と伝えた言葉は『ク氏を救いたい』ということを意味するものです。アルコールに依存するク氏に『お酒を飲まないで』とは言わないのは、敢えて相手の習慣を直させないという意思を込めてもいます。普通の女の子だったら、やめて欲しいと思うのかもしれませんよね。でも、ミジョンはお酒やつまみを買って渡す。相手のありのままの姿を愛しているのが彼女の強さなんです」

つまり、ミジョンにはミジョンの強さがあり、誰でもそれぞれの強さがあって、それが日常を幸せに感じさせる力になるということ。深く感じ取りたくなる作品です。