物件選びに1年半もの歳月を費やした僕。なぜそんなに時間がかかったかを説明するには、まずある建物について知っていただかなければいけません。
みなさんは秀和レジデンスという物件をご存じでしょうか。青い瓦屋根に白い塗り壁、そしてアイアンのバルコニー。秀和株式会社が手がけた南欧風のデザインは、一部のマニアから愛され、『秀和レジデンス図鑑』という書籍が発売されるほど。
実は、僕が購入したのもこの秀和レジデンスのシリーズです。
僕が初めて秀和レジデンスを認識したのは、まだ20代の頃。東京に来て間もない僕は、昔から憧れだった青山・表参道を根城によく遊んでいました。そんな折、見かけたのが秀和外苑レジデンス。神宮3丁目の交差点に佇む、まるで地中海沿いのリゾートホテルのようなクラシカルな趣に一目惚れ。「東京っつーのは、こんな洒落た建物があるんか〜」と田舎者丸出しで感動したものでした。
以来、代官山、北青山、南平台と、いろんなところで秀和レジデンスを見かけてはテンションが上がっていたものの、イメージ的に高級ラインなんだとばかり思い込み、中古マンションを買うと意識をしはじめても、当初はまったくの候補外。ところが、いざSUUMOを開いたら、なんでもないような顔で秀和レジデンスの名前が。見ると、価格も十分予算内。もちろん超高級住宅地は手が届きませんが、それなりのエリアであれば自分でも秀和レジデンスが買えることを知ったのです。
憧れの城に住める。そんなの、テンションが上がらないわけがありません。早速内見をしに行ったのが、当時売りに出ていた秀和高円寺レジデンスでした。最上階で抜けは最高。サブカルとお酒をこよなく愛する身としては高円寺という街との相性も文句なし。それが、中古マンションを買うと決めて最初の内見でしたが、他の物件を一切見ることなく、ウキウキと申込書にサインをしました。
しかし、その後に現金一括で購入するというツワモノが現れたため、残念ながらご縁はつながらず。人というのは欲張りなもので、一度手にしかけたものほど、どうしてもほしくなってしまうもの。自分も憧れの秀和レジデンスに住めるという泡沫の夢を見た僕は、そこから他の物件を見ても、どうしても秀和レジデンスの残像がちらつき、つい秀和レジデンスと比べて悪いところばかり目についてしまいました。まさに今カレに抱かれながら元カレを思い出すダメガールです。
そこで、このまま未練に縛られて生きるくらいならばと、思い切って秀和レジデンスに絞って物件探しをすることに。この決断こそが、僕が物件選びに1年半も時間がかかったいちばんの原因でした。
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