SUUMOのお気に入り検索条件に「秀和レジデンス」と設定し、毎日のように新着物件をチェック。条件に見合う物件が出るたびに内見に行き、その場で申し込みをするものの、どれもこれもその後、現金一括で購入したいという富豪が現れ、とんびに油揚げをさらわれるかたちに。
ただでさえリノベに向いている物件というのは限られています。市場に出回る中古マンションのほとんどは、販売業者によってすでにリノベがされたもの。当然、その分、販売価格は上がりますので、これからリノベをするつもりの僕にとって、わざわざ割高の値段を払ってリノベ済みの物件を買うメリットはありません。つまり、リノベをするならば、まだ業者の手が入っていない、言葉を選ばずに言うと汚くて古い部屋を探さないといけない。
それだけでも一苦労なのに、僕の場合、そこに「※ただし秀和レジデンスに限る」という注釈までついてくる始末。んなもん、ウォーリーよりも見つからねえ。
しかも、やっとの思いで見つけた物件を、後から現れる現金一括という最強のカードを持つライバルに奪われるわけで。今まで知りませんでしたが、こんなにも現金一括で中古マンションを買う猛者がこの世にいるんですね。なんなの? 業者なの?
こちらも申し込みをするからには、その物件が手に入る未来を思い描いているわけです。この街に住んだらどんな生活になるだろう。この部屋の形だったら、じゃあキッチンをどこに配置しよう。そんなことを考えながら売主からの返事を待ち、結果、毎回玉砕だとさすがにメンタルがキツい。気分は完全に『101回目のプロポーズ』の武田鉄矢です。
それでも、何かのAIのごとく来る日も来る日も「秀和レジデンス」で検索し続け、気づけば1年半が経過。もうとっとと別のマンションにすればいいことくらい自分でもよくわかっています。だけど、どうしても秀和レジデンスのことが忘れられなかった。
ここぞとばかりに打ち明けますが、僕は歴代の元カノからもらった手紙さえ、いまだに全部保管しているような人間です。自分がいかに未練がましいかは重々承知しているつもりでしたが、このときばかりは己の執念深さにさすがにちょっと引きました。たぶん僕にいちばん向いているのはライターではなくストーカーだと思う。
けれど、時にはその妄執が奇跡を呼ぶこともある。10000回だめでへとへとになっても10001回目は何か変わるかもしれないと吉田美和は言っていました。その10001回目がついに僕にもやってきたのです……!
『自分が嫌いなまま生きていってもいいですか?』
講談社・刊 1430円(税込)
※電子書籍は、書き下ろしのおまけエッセイ付き。
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生きづらさを抱える人たちから、共感の声多数! “推し本”著者による人気連載が書籍化。
本屋に行けば「自己肯定感」をテーマにした書籍がずらりと並ぶ昨今。
でも、実際に自己肯定感の低さで悩む人にとっては、自分を愛することの大切さは理解しつつ「そんな簡単に好きになれてたら苦労しないよ…」というのもまた偽らざる本音でしょう。
本書では、自分が嫌いなことには誰にも負けない自信のある(?)著者が、
◆「自分嫌い」を決定づけた、幼い頃からのコンプレックスや苦い経験の数々
◆大人になって日々直面する“自己肯定感が低い人あるある”
◆自分を好きになりたくて、“自分磨き”で試行錯誤した日々
◆そして辿り着いた「これ以上、自分が傷つかないための方法」
を、面白おかしく、ときに切なさも交えて綴ります。
自分のことが好きになれなくても、人に優しくすることはできるし、幸せにもなれるはず。「なりたいものになれなかった」「誰にも選ばれなかった」そんな自分と、折り合いをつけられずにしんどさを抱える人たちの背中に、そっと手を添える一冊です。
構成/山崎 恵
前回記事「マンション購入の「譲れない条件」優先順位のつけ方は?40代フリーランス・リノベ前提の僕の場合」>>
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