劇場で公開される新作映画は、たとえ過去が舞台の作品であっても、「いま世界で起こっていること」が描かれているもの。3月8日の国際女性デーに是非意識してもらいたいのは、女性たちが置かれている現在地と、向かうべき道を示してくれるこれから公開の新作5本。私たち女性が知らないうちに刷り込まれている考え方、当たり前と思わされている常識を認知するために、そしてこれから起こりうる、すでに起こっているバックラッシュを意識するためにも、世界のフェミニズムの現在地をぜひとも確認して!
『コール・ジェーン -女性たちの秘密の電話-』
1968年のアメリカ。二度目の妊娠で心臓病が悪化、唯一の治療法は「妊娠をやめること」と聞かされた主婦ジョイ。夫と相談し病院に中絶の特例許可を求めるが、理事会は「中絶には反対」とあっさり却下。そんな中、街で「妊娠? 助けが必要なら、ジェーンに電話を」という張り紙を見つけ……。
人工中絶が違法だった60年~70年代初頭のアメリカを舞台に、1万人を超える人工中絶を手助けした組織「ジェーン」と、そこに関わる女性たちのしたたかな戦いを実話をベースに描いたドラマ。中高年男性のみの病院理事会が、ジョイの意見や不安を完全無視で、彼女の夫だけを相手に中絶を却下する場面になにしろ驚愕。言うまでもなく、自身の身体と健康についての決定権が本人にあるのは当たり前ですが、こと妊娠や出産の話になるとその権利(リプロダクティブ・ヘルス&ライツ)は家族や社会によって侵害されがちです。
中絶はかつては女性に罪悪感を抱かせる描き方ばかりされてきましたが、本作品のように女性のポジティブな選択として描かれるべき。アメリカでは中絶を違法とする動きが再び活性化していますが、一方の日本では、経口中絶薬が一般化されず、この映画で行われている60年代と変わらない掻爬法(WHOが「危険で時代遅れ」と指摘)が一般的。中絶女性への根強い処罰感情も感じられます。
作品情報)
『コール・ジェーン -女性たちの秘密の電話-』
3月 22 日(金)全国公開
監督・脚本:フィリス・ナジー
プロデューサー:ロビー・ブレナー
出演:エリザベス・バンクス、シガニー・ウィーバー
2022 年/ アメリカ /原題:Call Jane
配給:プレシディオ
公式X:https://twitter.com/CallJane_jp
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