失恋や卒業、引っ越しなど、人生の節目でいろいろな“別れ”を経験してきたけれど、やっぱり死別というのは桁違いにしんどいもの。あの感覚には、何度出くわしても慣れることがありません。ただ、「これ以上、大事な人を失いたくない!」と思っても、みんな平等に訪れるのが“死”というもの。
2月29日にNetflixで配信スタートした映画『パレード』は、今まさに喪失を抱えている人や、死を恐れている人に観てもらいたい作品です。『新聞記者』(2019年)や、『余命10年』(2022年)など数々のヒット作を世に送り出してきた藤井道人監督が手がける本作は、旅立ってしまった人の目線で遺された人への想いを描く愛の物語。本稿では、『パレード』を三度観たわたしが、この映画の魅力をたっぷり解説していきたいと思います。
あらすじ:瓦礫が打ち上げられた海辺で目を覚ました美奈子(長澤まさみ)。離ればなれになった一人息子を捜す彼女は、道中でアキラ(坂口健太郎)や勝利(横浜流星)、マイケル(リリー・フランキー)とその仲間たちと出会い、自分が死んだことを知る。ただ、未練を残して世を去ったため、まだ“その先”に行くことができない。アキラたちもまた、さまざまな理由でこの世界にとどまっていた。現実を受け止められない美奈子だったが、月に一度死者たちが集い、それぞれの会いたかった人を捜すパレードに参加したことをきっかけに、少しずつ心が変化していく。
遺した側の気持ちに寄り添うめずらしい構成
多くの作品は、死がお互いを分かつところで終わってしまい、そこからは遺された者の葛藤が描かれていきます。遺した側の想いは、なかなか伝わらない。しかし、『パレード』は死んでしまった人の視点で物語が繰り広げられていきます。どんな後悔を抱いてきたのか。遺してきた人に、どうなって欲しいと願っているのか。実際は聞きたくても聞けないことを、このドラマを通して知ることができます。
また、豪華キャスト陣が勢揃いしているのも凄みのひとつ。長澤まさみさんに、坂口健太郎さん、横浜流星さんにリリー・フランキーさん、森七菜さんと主演級の俳優陣が、ひとつの作品に集まり、さまざまな葛藤を体現しています。
わたしは、世代が近いのもあって、横浜流星さん演じる元ヤクザの勝利の物語がグッときました。勝利は、遺してきた彼女のことが心配でならない。でも、その彼女は新しい人と恋に落ちていて……。「なんだ、もう前に進めてるじゃん。大丈夫じゃん」と思ってしまうけれど、実は遺された側もさまざまな葛藤を抱えながら生きているんですよね。深川麻衣さんの演技にもグッときました。
ほかのメンバーにも、それぞれ“その先”に進めない理由が秘められています。自分や、すでに旅立ってしまった大切な人と重なるキャラクターが必ず一人は見つかると思うので、ぜひ本編で確認してみてください。
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