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朝ドラが楽しいと、人生が楽しい。久しぶりに、そんな喜びに毎朝打ち震えています。

山のように積まれた書きかけの原稿も、同じく山のように積まれた洗っていない食器も、8時になったら一旦サヨナラ。テレビの前にロックオンして、15分だけ別世界へとスリップする。この春からスタートした連続テレビ小説『虎に翼』があまりにも面白くて、僕の怠惰な朝の風景が劇的に変わりつつあります。

この面白さを一緒にシェアできる人を増やしたい! ということで、今回から隔週で『虎に翼』について語らせていただくことになりました。もうすでにどっぷり夢中の方も、まだこれから出会う方々も、ぜひ半年間、お付き合いくださいませ。

では早速、第1〜2週をプレイバックします!
 

 


「はい」と飲み込むのではなく、「はて?」と疑問を口にしていい
 

思い出し笑いがあるように、「思い出し悔しがり」みたいなものがあるとしたら、瞼に浮かぶ光景はいつも決まっている。

理不尽なことを言われたのに、うまく言い返せなかったこと。
違和感を覚えたのに、それの何にモヤモヤするのか言葉にできなくて受け流したこと。
不当に踏みにじられたのに、波風を立てて空気が読めないと言われるのが嫌で、おどけて道化を演じたこと。

なんであのとき、ちゃんとNOと言えなかったんだろう。せめて不快であると意思表示できなかったんだろう。タイミングを逃した怒りは、悔しさとなって、無力な自分を呪い責める。

だから、寅子(伊藤沙莉)を見ていると、胸が沸き立つ。「はて?」と首を傾げるたびに、こんなふうに立ち止まって良かったんだと気づかされる。あの日、自分にしてあげられなかったことを寅子にしてもらっているような気持ちになるのです。


『虎に翼』は日本初の女性弁護士のひとり・三淵嘉子をモデルとした、脚本家・吉田恵里香によるオリジナルストーリー。両親からお見合いを勧められながらも、どうしても結婚に自分の幸せがあるとは思えないヒロイン・寅子が、法律と出会い、自分らしい生き方を見つけていく姿を、まるですべての女性たちの背中を強く優しく押してくれるようなトーンで描いていきます。

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その寅子の口癖が「はて?」。結婚を嫌がる娘に対し、母のはる(石田ゆり子)が「女学校まで行かせたのに情けない」と嘆けば「はて?」と異議を申し立て、親友の花江(森田望智)が「寅ちゃんって、そんなお子ちゃまだったの?」と呆れれば「はて?」と眉をひそめる。旧来の常識に迎合しない。疑問に感じたことは、ちゃんと口にする。この「はて?」こそが、寅子が前に進む推進力となっています。