●「お風呂に入れない」状況で気をつけたいことは?


——地震など有事のとき、避難所などで水が不足すると、膣を清潔に保てなくなって感染症になるリスクが高まりそうですね。

柳田先生:1ヵ月のうち、1週間が生理だとすると「月の4分の1は生理の期間」ということ。避難所に100人の女性がいたら、25人くらいは生理中である可能性があるわけです。

その中には、生理が重い人もいるでしょうし、先ほどは子宮内の感染の話をしましたが、清潔を保てないことで外陰部がかぶれてしまったり、ただれてしまったりする可能性もあります。お風呂に入れなくても、経血を水で洗い流すなどの工夫が非常に重要だと思います。
 

 


生理の勘違い③——生理中は「安全日」だから避妊なしで性交渉してOK?!

生理中は「感度が良くなる」「避妊なしでOK」?! 彼氏や夫に読んでほしい「生理の勘違い」。産婦人科医が伝える注意点_img0
 

「生理中は安全日」これもよく聞く勘違いです。一体なぜこんな認識が出てくるのでしょうか……?


 柳田先生の見解 
「生理中は妊娠しない」というのは誤解です。妊娠する可能性はありますし、子宮への感染症の観点からも、生理中の性交渉は避けるべきです。
 


 もっと教えて!柳田先生 
●「生理中」はなぜ「安全日」と言われるのか?


——先生、生理中は妊娠しない「安全日」という誤解はなぜ生まれたと思いますか?

柳田先生:生理がどういう状態かというと、まず排卵をするわけですね。排卵をすると、卵子が卵管の中を通って、子宮の方に移動してきます。その途中で、膣から入ってきた精子と卵子が出会うことで受精をするわけです。

さらに、受精卵が子宮の中に戻ってきて、そこで子宮にペタッとくっつくことを「着床」と言い、そこで妊娠が成立するんです。着床がないままの子宮の状態がしばらく続くと、よく言うのは、赤ちゃんを受けるための子宮内膜というベッドが古くなって、「今月はもういらないね」ということで排出される。それが生理です。

正常な生理は、「今回の周期では妊娠しない」と体が判断し、古くなった子宮内膜が排出される状態なので、生理前はたしかに「妊娠しにくい状態」になります。これが巷で「安全日」と言われるようになったのでしょう。
 

●「生理中」でも「妊娠」の可能性があるのはなぜ?


——「正常な生理」と先生がおっしゃいましたが、正常ではない生理との見分け方もあるのでしょうか?

柳田先生:生理不順の人は、出血があっても「実は生理ではない」こともあるかもしれません。それを把握するための一つのヒントが、基礎体温です。継続して基礎体温をつけている人は、「いつくらいに正常な生理がくる」ことが大体わかります。ですが、つけていない人の方が多いでしょう。

また、生理中になると、子宮口が少し開くので、そこから精子が中に入りやすい状態になります。精子の寿命は3〜7日でさほど長くはありませんが、まれに長生きする精子もいるんです。長生きした精子が子宮内にとどまって、「次の排卵のとき」に妊娠してしまう可能性があるんですね。

加えて、排卵期に出血をする人もいます。排卵期は1番妊娠しやすい時期です。その時期の出血を生理だと間違え、「安全日」だと思って避妊具なしで性交渉をすれば、当然妊娠する確率も高まってしまいます。