『虎に翼』穂高(小林薫)や雲野(塚地武雅)ら、男性たちの言葉はなぜ寅子を絶望させたのか。「無理解の善意」が人の心を折る地獄【第7•8週レビュー】_img0
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「本気で、地獄を見る覚悟はあるの?」

母・はる(石田ゆり子)の問いに「ある」ときっぱり答えることから始まった寅子(伊藤沙莉)の弁護士人生。けれど、その地獄は想像以上のものでした。
 

 


努力に努力を重ねて、高等試験に合格。弁護士の資格を得たものの、女性というだけで依頼人からは敬遠される。社会的地位を得るために優三(仲野太賀)と結婚し、ようやく仕事が軌道に乗ったかと思えば、戦争に駆り出された男性の代わりとして仕事が集中し、同じ女性の依頼人からは「やっぱり女の弁護士先生って手ぬるいのね」とあなどられる始末。

弁護士の道を歩み出した久保田(小林涼子)も中山(安藤輪子)も法曹の道を去り、前を見ても後ろを振り向いても、自分ひとり。「世の女性たちのために」「辞めていった仲間の分も」という誓いは、いつしか寅子を蝕む呪いとなっていました。

そんな中、決定的だったのが妊娠でした。身重の体でハードな業務に忙殺されていた寅子は、講演会の直前で倒れてしまう。寅子の妊娠を知った恩師・穂高(小林薫)は言います。

「結婚した以上、君の第一の務めはなんだね。子を産み、良き母になることじゃないのかね?」

ここからのやりとりについて、視聴者の間でも受け止め方が大きく分かれました。穂高の言葉に反発する寅子に共感する人と、穂高の説得は寅子の体を思いやってのことであり、寅子は少し視野狭窄になっているという人。どちらの声も間違っているわけではありません。

その上で、僕は前者。穂高の言葉に失望を覚えた者の一人です。なぜ寅子は弁護士を辞めたのか。今回は、寅子の決断の背景にあるものについて語ってみたいと思います。