路上で暮らしていたはちを受け入れることにしたのは、はちもまた、人にたくさん懐いており、“終活”をしていたのではないかと感じたからです。2019年にはちをうちの家猫にしたのですが、家での暮らしに慣れるまで少し時間がかかりました。また、ぽんたより少し若かったせいかとても活発で瞬発力があり、脱走未遂を起こしたこともありました。あと、夜泣きもひどかったです。
はちを迎えて2年が過ぎた頃、私は2匹目の猫を迎えることを考え始めました。身近に多頭飼いをしている人が多く、「猫同士で社会を作ってくれるため、飼い主にべったりにならないのが利点」というところが気になりました。また、何より複数の猫が戯れている様子はかわいい!
実ははちは、年々飼い主依存が高まっていて、遅く帰宅すると甲高く鳴き、「なでて」「遊んで!」という要求も激しくなっていました。だから、もう1匹いればそれが緩和されるのではないかという期待もあったのです。
今まで野良猫を保護してきましたが、はちが猫エイズキャリアということもあり、「はちと同じ猫エイズキャリア猫であること」「はちと歳が近いこと」「できればメスであること(同性同士だとライバル心を煽る可能性がある)」「猫エイズキャリア以外の疾患は持っていないこと」「人慣れしていること」という条件を決め、保護猫カフェやシェルターに足を運び、SNSをチェックしはじめました。
とあるSNSで目に留まったのが三毛でメス猫、推定9歳のハナでした。正式譲渡前のトライアル期間では、はじめは先住のはちとの関係は良好そうに見えたものの、はちが軽い膀胱炎になったり、2匹が一触即発の状態になったりして、一時はもうだめではないかと思ったほどでした。でも、トライアルを予定より1週間延長してみて、2匹の距離は確実に縮まっていると手応えを感じ、ハナを家族として迎え入れることを決めました。
1匹でのびのびと暮らしていたはちにとっては、2匹目の仲間なんていらなかったかもしれません。飼い主依存が強まるはちのため、といいつつ、結局は私のエゴでしょう。でも、グイグイと詰め寄っていく姉御肌のハナが加わったことで、はちは落ち着きを見せるようになりました。
2023年、私が病気にかかり2ヶ月間入院しました。その間はツレアイが2匹の世話をしてくれたものの、私ももう若くはなく、いつ何が起きるかわからないことを実感。3匹目がいてもいいかなとうっすら思っていたのですが、自分の健康状態や経済状況の見極めが大切だと痛感しました。
はちとハナはシニア猫な上に猫エイズ陽性なので、彼らだって、いつ何が起きるかわかりません。無理な治療や延命はせず、決められた寿命が尽きるまで穏やかに暮らしてほしいと願っています。元野良猫の彼らにとって安心、安全な暮らしを保障したいという使命感が私の原動力ですが、ぽんたから、猫と一緒に暮らすよろこびを教えてもらい、もう猫のいない生活は考えられないようになってしまったのです。
ハナを受け入れてから3年が経った今、はちとハナはいい距離感でともに暮らしています。2匹が部屋で気持ちよさそうに寝そべっているのを眺めていると、野良猫時代が長かったものの、今は安全な場所で余生を過ごすことができて、私も少しはいいことができたのかな、と感じています。
文・編集/吉川明子
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