猫と一緒に暮らす人にとっては、家族のように大事にしている猫と1日でも長く暮らせるのは幸せなことです。その一方で、猫も飼い主も年齢を重ねていくことになります。

それでも、猫とともに暮らしてきた時間はかけがえのないものですし、シニアになった猫だからこそ、愛着もひとしおです。そこでミモレでは、シニア猫(ここでは10歳以上と定義)と暮らす人たちのお話に耳を傾けてみようと思っています。

今回登場するのは、東京・高田馬場にある老舗フラメンコ・舞踊スタジオ「ラ・ダンサ(LA・DANZA)」の看板猫・グリとグラ。教室のオーナーは、民主化後のスペインで、東洋人として初めてスペイン王立舞踊演劇高等芸術学院(コンセルバトリオ・マドリー)の公認スペイン舞踊師範資格を取得した小林伴子さん。自身も幼い頃から動物が好きで、生き物が身近にいるのが当たり前。今も自宅に猫が1匹います。

実は、「ラ・ダンサ」には、スタジオ近くの公園で保護した初代・看板猫のグリがいて、長年、講師や生徒たちにかわいがられてきました。初代猫が引退後、7年間、看板猫不在の状態が続いていましたが、縁あって2023年4月に、推定10歳の黒猫姉妹がやってきたのです。

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フラメンコスタジオ「ラ・ダンサ」の看板猫・グリ(写真上)とグラ (写真:ラ・ダンサ、以下同)

<飼い主プロフィール> 
小林伴子さん(73歳)
1978年スペイン留学、1983年「スペイン王立舞踊演劇高等芸術学校(コンセルバトリオ・デ・マドリー)」の公認スペイン舞踊師範資格を取得。1984年日本に帰国後ラ・ダンサを開設。1991年の第3回小林伴子フラメンココンサート「赤い靴・私抄」で平成3年度文化庁芸術祭賞受賞。日本フラメンコ協会副会長。2023年4月に、スタジオにグリとグラを迎え入れる。自宅でも、ハチワレの猫(たまちゃん・12歳)と暮らす動物好き。

 

<同居猫プロフィール> 
グリ(推定11歳)
黒のメス猫。グラと一緒に10年間、ある家族のもとで暮らしていたが、その家の事情で手放されてしまう。猫の保護活動を行うすあま商會に引き取られ、そこで小林さんと出会い、「ラ・ダンサ」の二代目看板猫に就任。人懐っこくて好奇心旺盛。大柄だけど全体的に丸っこい。尻尾は細くて短め。運動神経はあまりよくない。グリは通称で、本名はアレグリア、2代目グリ。

グラ(推定11歳)黒のメス猫。グリと一緒に「ラ・ダンサ」の看板猫となる。大人しくて人見知りでビビりだけど、慣れてくるとゴロゴロと大きく喉を鳴らして甘えてくる。グリと同じく大柄で、尻尾は太くて長い。目は三白眼。グラは通称で、本名はネグラ(スペイン語で黒の意。フラメンコのルーツであるジプシーにとって重要な色は黒ということにちなんで)。

〈歴代猫プロフィール〉
初代グリ(20歳没)
黒のメス猫。1998年に「ラ・ダンサ」近くの公園に出没。手のひらサイズの子猫で人懐っこく、スタジオで保護することに。以来、初代・看板猫として講師や生徒たちに愛される。17歳の時に、長年事務を担当するスタッフの自宅で隠居することに。2018年に天寿を全うし、20歳で虹の橋を渡る。本名はアレグリア。

 
 


うちのスタジオには長年、看板猫のグリがいました。近くの公園で保護した猫さんで、みんなから愛される看板猫でした。スタジオで暮らし、みんなで当番を決めて世話をしていましたが、17歳の冬にスタッフの家で隠居することになり、その後、20歳まで生きてくれました。 

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17歳まで看板猫として活躍した先代・グリ

初代・看板猫のグリがスタジオにいなくなってから10数年が経っていました。実は、私自身も家で猫を1匹飼っています。以前は猫が何匹もいたのですが、今では1匹になってしまいました。その子が留守番の時などにかわいそうなので、一緒に過ごせるシニア猫とご縁があれば、と保護猫シェルター併設カフェ&スペース「すあま商會」さんに通うようになりました。

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スタジオの看板にも黒猫が!

そんなある日、「すあま商會」のすあまさんから、「10歳の姉妹猫がいるんだけど……」と声をかけられました。先代のグリも黒猫でしたし、2匹一緒なら、またスタジオで迎え入れてもいいんじゃないかと思ったんです。先代がスタジオにいなくなってから久しいのですが、猫さんとのあったかい思い出はたくさんありましたし、講師や長年の生徒さんも猫好きの人が多いので、この姉妹猫がスタジオに来てくれたらきっと歓迎してくれるはず、と思いました。

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事務所の椅子が2匹ともお気に入りで、取り合いになることもしばしば。

すあまさんは、私たちが当番制で先代猫の世話をして、晩年は個人宅に迎え入れ、最期まで看取ったことを知っていたので、無事、譲渡が決まりました。姉妹猫をスタジオに迎え入れた当初は少し緊張していたようですが、1ヶ月もすると慣れ、玄関で生徒さんや講師をお出迎えしたり、お見送りしたりするのが日常になりました。彼女たちは、私たち人間を恐れることはありません。10年も一緒に暮らした家族から急に手放されてしまった詳しい経緯はわかりかねるのですが、きっと、かわいがられていたのだと思います。

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夜、ひそかにスタジオでフラメンコの猛特訓中?

私たちのスタジオは地下に稽古場、1階に更衣室や事務室、2階に音楽室と3フロアあります。グリとグラは自由に行き来していますが、大半を事務室で過ごしています。ここにごはんとトイレ、ベッドなどが揃っているからです。もはや事務所なのか猫部屋なのかわかりません(笑)。

 
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