今回お話を伺うのは42歳で結婚された里美さん。4年間の仲睦まじい結婚生活を送りますが、ある日、夫の智樹さんが脳梗塞で倒れてしまいます。手術は成功しますが、彼は前の結婚で授かった娘のことは覚えていたものの、里美さんには「そちら、誰?」と訝し気です。衝撃のなか、妻として必死にリハビリ病院を探すなどサポートをする里美さんでしたが……?

「リハビリ病院が3カ月で500万円...?」再婚した妻を忘れてしまった脳梗塞の夫。一刻も早くリハビリを開始したい妻が迫られた決断_img0
 
取材者プロフィール
里美さん(仮名):47歳、営業職。42歳のときに結婚。4年後、夫が脳梗塞で倒れたことで生活が一変。
智樹さん(仮名): 55歳、元広告デザイナー。50歳のときに里美さんと再婚。昨年、54歳のときに脳梗塞で倒れてしまう。

前回記事
前編:「そちら、誰?」50代で通勤中に脳梗塞で倒れた夫。目覚めたとき、再婚妻に放った衝撃の一言>>

 


50代で倒れた夫……妻に降りかかる現実


「夫が意識を取り戻したのを喜ぶ間もなく、容赦なく現実が押し寄せました。倒れて1週間もすると、ICUは出ることができましたが後遺症が明らかになります。彼は記憶がまだらで、言葉も詰まるようになっていました。また右手と右足に麻痺が残り、自由に歩くことができません。

私は介護の経験がなく、まだ若いような気がしていて、夫や自分が突然働けなくなったらどうするのかという想定も知識もありませんでした。毎日右往左往していましたね。手術をした病院にずっといるわけじゃなく、容体が安定したら、急性期病院から回復期リハビリテーション病院にうつるのが一般的ということも初めて知りました。

専門の方にアドバイスをいただきながら、2週間で5ヵ所ほど施設を見学したり、申し込んでは断られたり。その間も夫は私を判別していません。心細くて、どうしてこんなことになっちゃったんだろうと毎晩泣いていました。彼が『ごめんね里美さん、ちょっと記憶が混乱してたんだ』と笑ってくれるのを、毎日待っていました」

ようやくパートナーに巡り合え、2人の生活が始まった……と幸せをかみしめていた里美さんにとって、夫が急に倒れ、要介護になってしまうというのはあまりに想定外のことでした。とくに智樹さんは、写真を拝見すると年齢よりもずっと若くはつらつとして見えましたし、元来性格も社交的でおしゃべり上手な方。倒れたことでうまく話せなくなり、おふたりの生活はなにもかもが激変してしまいました。

そのうえ、リハビリは始めてみないとどのくらいかかるかは未知数だと医師は告げます。「社会復帰はいつ頃になりますか? 一般的な目安だけでも」と里美さんがすがるような思いで尋ねると、医師は言いにくそうにこう告げます。

「広告デザイナーの仕事に復帰できるかどうかは……正直難しいかもしれません。こればかりはご本人がどれくらい意欲的にリハビリに取り組むかにもよるでしょう」