ファッションの街・パリでコレクション・モデルとしてデビューし、1シーズンに十数件のショーを掛け持ちするなど、文字通りのトップモデルとして活躍した山口小夜子さん。生前に残した多くのインタビューを再編集した新刊『この三日月の夜に』から、独自の美容法と健康法について語った部分を抜粋・再構成してお届けします。

日本人の美を世界に知らしめたあのメイクから、日々のスキンケアまで。美容にまつわるあれこれをまとめた前編に続き、後編では、美しく健康な身体作りのためのルーティンを紹介します。

【前編はこちら】伝説のモデル・山口小夜子の美容論「日本人は目が細いのが欠点と思いがちだけれど、それは欠点ではなく特徴だと思うのです」>>

伝説のモデル・山口小夜子を作った日々のルーティン。ごはんとみそ汁の朝食のほかに、欠かさなかった「もう1つのもの」とは_img0
 

山口小夜子 Sayoko Yamaguchi
横浜市出身。幼いころからファッションに強い興味を示し、高校卒業後杉野学園ドレスメーカー女学院に学ぶ。170センチの長身とスタイルの良さから、ファッションモデルになるよう勧められる。1970年代はじめからモデルとしての活動を始め、瞬く間に世界のトップモデルへの道を駆け上がる。山本寛斎、髙田賢三、三宅一生ら日本人デザイナーのほか、イヴ・サンローラン、クロード・モンタナ、ティエリー・ミュグレー、ジャン=ポール・ゴルチエなどトップデザイナーの「ミューズ」として数々のショーに出演。アメリカのロックバンド、スティーリー・ダンの名盤『彩(エイジャ)』のジャケットを飾るなど、世界に知られる存在となった。また、パフォーマーとして寺山修司作品や山海塾との共演など多数の舞台に出演した。創作舞踊家・勅使川原三郎と共演し、ダンサーとして印象的な舞台をつくり上げた。舞台衣裳やアクセサリーを自らデザインするなど、表現者として多面的な才能を示した。2007年8月、急性肺炎で急逝。

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不浄を洗い流し、潤いを与えてくれる“水”の力


私は毎朝、起きるとまず水を一杯飲みます。それは眠気を払い、体の中を洗い清め、きのうの疲れと一緒に不浄なものすべてを洗い流してくれるような気がします。同時に、新しい一日を迎えるために気持ちをリフレッシュさせ、適度な緊張感を与えてくれるものなのです。一杯の水はまた、胃腸をきれいにし、肌にツヤを与えてくれるような気がします。

私がいつも飲むのは富士ミネラルウォーター。ミネラルウォーターは、自然の水を精製してミネラル分のバランスがとれた状態にしたものです。口あたりがよくて飲みやすく、おいしいだけでなく、ミネラルの補給としても意味があります。

昔は、冬の間に降った雪を壺に入れておき、その雪解け水で溶きのばした白粉が最も上等で、この水は化粧水としても最適だとされていたようです。日本の四季と、湿度の高い気候は肌にとっては最良の条件で、しかも良質の水が豊富にあることが、日本女性の肌の美しさをつくってきたのだとか。現代はどこも水道が引かれていて、自然のままのおいしい湧き水や井戸水は望めませんが、自然の恵みをできるだけ生かして、水をおおいに利用したいと思っています。(小夜子の魅力学 1983年3月13日)

ごはん+おみそ汁の朝食が、1日の大切なスタート


私はごはんにおみそ汁という和食が大好き。毎朝必ず、ごはんとおみそ汁を食べてから仕事に出かけます。朝起きてまず水を一杯飲み、朝ごはんをおいしくいただくことは、その日一日を気持ちよく過ごし、よりよい状態で仕事をするための大切なスタートです。

朝食のメニューは、ごはんにおみそ汁、それに炒めものやおひたしなどにした野菜類、ハムなどを少しと卵、それにビタミン剤です。パンよりもごはんのほうが好きですし、肉よりも魚のほうが食べられます。外国での仕事が多くなるにしたがって、出されたものを残すのは失礼ですから肉もなんとか食べられるようにはなりましたが、どうも西洋料理は苦手です。

特に意識してとるようにしている食品は、黒ゴマとほうれん草、ポテトや人参です。マレーネ・ディートリヒは、かつて、美しさの秘訣はと聞かれて、トイレに行くことよと答えたそうですが、排泄作用がスムーズにいくことは美容には欠かせない条件です。私も、ゴマや野菜類のおかげでしょうか、その条件にはどうやらかなってはいるようです。(小夜子の魅力学 1983年3月13日)

ビタミン剤はその日の食事によって量を調整

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食事に次いで私が今心がけていることは、ビタミン剤をのむことです。

毎日のんでいるのは、ビタミンCとE、それにB。のむ量はその日の食事量や栄養のバランスによって変えます。栄養のバランスといっても、何を何グラム食べたからビタミンは何ミリグラムというような計算をするわけではなく、今日は食べた量が少ないなと思ったら、ビタミン剤を少し余分にのむというくらいのものですが、一日一回一カプセルは必ずのみます。

ビタミンCは美容のためのビタミンといわれるように、毛細血管を強くする働きや肌を白くする作用、風邪を予防する作用があるといわれています。さらに最近では、ストレスに対して効果があることも知られるようになりました。ストレスを多く受けると大量のビタミンCが消費されるので、仕事をしていたり人間関係が煩わしくてストレスを受けやすい人は、それだけビタミンCをたくさんとる必要があります。ビタミンCは多くとりすぎても、使われなかった余分のものは尿と一緒に排泄されるそうです。

ビタミンEは、日本でも最近注目されている、脂肪の酸化を防ぐ老化防止のためのビタミンで、小麦胚芽油として売っているところもあります。私がのんでいるのはカプセルに入ったもので、アメリカではいろいろな含有量のものがあります。

このビタミンEは、血管の末端の血のめぐりをよくする働きがあり、女性には特に効果があるということです。頭痛、めまい、冷え症、イライラなど、更年期障害のいろいろな症状のほか、シミ、ソバカス、肌荒れにも効きめがあるとか。

これらのビタミン剤をのんでいて、具体的にここがこうなったというほど特に目立った変化はありませんが、ビタミンEをのみはじめて生理痛がうそのように治ったという話は聞いたことがあります。(小夜子の魅力学 1983年3月13日)

 
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