作家・ライターとして「現代のカップルが抱える問題」について取材をしてきた佐野倫子。現代に生きる誰もが抱えうるパートナーとの問題を浮き彫りにします。

今回お話を伺うのは42歳で8歳年上の方と結婚した里美さん。その後、とても仲のいい結婚生活を4年続けますが、ある日、夫が脳梗塞で倒れてしまいます。その日から生活が一変してしまった里美さん。一番の衝撃は、夫が自分の顔を見ても誰だかわからなくなってしまったことでした。

「そちら、誰?」50代で通勤中に脳梗塞で倒れた夫。目覚めたとき、再婚妻に放った衝撃の一言_img0
 
取材者プロフィール
里美さん(仮名):47歳、営業職。42歳のときに結婚。4年後、夫が脳梗塞で倒れたことで生活が一変。
智樹さん(仮名): 55歳、元広告デザイナー。50歳のときに里美さんと再婚。昨年、54歳のときに脳梗塞で倒れてしまう。
 


もう子どもは産めない……30代で知った運命


「32歳のとき、子宮がんが見つかり、手術で治療しました。幸い現在に至るまで元気でいられたので幸運だったと思いますが、その手術で子宮を切除したため、30代前半で私の人生では子どもは産めないことが決まりました。

病気のこともあり、当時お付き合いしていた彼と別れることに。『ああ、これはもう結婚することもないだろうな』と悟ったような気でいました」

快活でおしゃれな雰囲気の里美さん(47)は、取材を開始すると当時の状況や気持ちを的確に教えてくださいました。現在まで営業職として活躍していらっしゃると伺い、きっと仕事ができる方なのだろうと容易に推察することができます。

明るく、飾らない口調でしたが、冒頭から伺った内容は心が痛むものでした。

いつかは結婚して子どもを産む。そんなふうに描いていた里美さんの青写真は、あっさりと変更されることになります。恋人との別れが、元来は前向きな里美さんから結婚のイメージを失わせてしまいました。