介護において大変なことの１つに、臭い問題が挙げられます。在宅介護では、臭いに関するトラブルは比較的多く見られ、排泄物による臭いや身体から発生する臭い、室内や衣服・寝具による臭いなどが頭を悩ませます。
全国の特別養護老人ホームを対象に行った臭い環境に関する調査では、８割の施設が気になる臭いの種類として「糞便臭」を挙げています。
相談を寄せてくださった直子さんもやはり「排泄物の臭い問題から逃げたい……！」とモヤモヤした気持ちを抱えているようです。
■介護歴１年／83歳になる母親を在宅で介護中。直子さん（53歳）
直子さん：私は１年ほど前から母の介護をしていますが、「おむつは嫌」という母の意見を尊重し、夜だけポータブルトイレを利用するようになりました。ポータブルトイレを使えばベッドの隣で排泄を行えるので、夜中に私たち家族を起こさなくても済むという母なりの気遣いもありましたが、私は毎朝バケツに溜まった排せつ物を流すという後処理が何より辛くて。排泄物の臭いがバケツにこびり付きますし、バケツを洗うという作業もできることならやりたくありません。何か良い方法はないでしょうか……。
渋澤：介護における臭い問題は切実ですよね……。ポータブルトイレを使用する際、バケツに水を溜めておくのが主流ですが、排泄処理は本当に大変です。そこで、少し費用はかかりますが、夜だけの使用であればポータブルトイレ用処理袋を使ってみてはいかがでしょうか。トイレの後処理に困っている、臭いが気になる方におススメしています。受けバケツに水を張らずに排泄することで、バケツの洗浄をはじめとした後処理が一切不要になりますし、吸水シートのおかげで尿の臭いも漏れ出ません。排泄後は燃えるゴミとして廃棄できるので、心理的負担は一気に軽減されるのではないでしょうか。
ワンズケアのトイレ処理袋シリーズは全部で３種類ありますが、最も安価なもので１枚あたり100円ちょっと。トイレ処理袋を使うことで心理的負担が軽減されるだけでなく、バケツ洗いしていた時に比べて１ヵ月で約20時間もの時間が短縮されます。
家事における時短と同じように、介護の世界にも時短は存在するのです。
■介護歴２年／80歳の義父を同居で介護中。千尋さん（55歳）
千尋さん：夫の父は足腰が弱っていて、足に力が入らないので寝る時は介護ベッドを利用しています。起きる時はベッド横のサイドレールにつかまって起きますが、レールがグラついて危ないんです。寝かせる時もベッドの中央あたりに腰かけるので、頭側に引き上げる動作も大変で。しかも介護をしている私が、それによって最近腰を痛めてしまったんです。そもそも使い方が間違っているのでしょうか。
渋澤：介護ベッドのサイドレールを手すりとして使う方は多いですが、本来は転落を防ぐベッド柵です。取り付け方法がそもそも強く固定されておらず、不安定なためグラグラするのですね。また、千尋さんがお困りのように、ベッドに寝かせる時は足側に座らせてから寝転ばせると、最終的に上に引き上げなければなりません。足側から頭側に戻す作業は大変なので、ベッド周りの動作の補助でつかまるところが必要であれば、サイドレールではなく介助バーを使ってみてください。介助バーはグリップが太いので、握りやすく安心です。ベッドに腰かけた状態から立ち上がる際、グリップが前方に設定できることもメリットです。
介助バーに関しては、各社さまざまな商品を出しているので、参考にしてみてはいかがでしょうか。
最近は、40～60代の方がくつろぐために電動リクライニングベッドを購入するケースも増えてきました。上体を起こせば読書やゲームも楽々できますし、テレビを観るにもソファ感覚でゆったり過ごせます。脚上げ機能で、足のむくみを和らげるなんていう効果も期待できます。
ニトリでは、折りたたみ可能な電動ベッドを５万円以下で出しています。物によっては将来介護ベッドとして使うこともできるので、サイドレールや介助バーの取り付けが可能かどうかチェックしておくと良いかもしれません。
次回の記事では、高齢親にオススメしたい、食生活の便利アイテムを紹介します。
構成／渋澤和世
取材・文／井手朋子
イラスト／Sumi
編集／佐野倫子
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