だからこそ、日本の朝の顔として定着している朝ドラで、いろんなパートナーシップを登場させた。結婚してもしなくてもいい。恋愛だってしたい人だけがすればいい。やりたい仕事を追いかけ続ける人生も美しいし、家族の幸せを守る人生も美しい。人生を共にするのは、夫婦や親子だけでなく、友達や赤の他人でもいい。僕たちは何に縛られることも、誰から定義されることもないのです。そのことを伝え続けるために、決して一色だけに限らない、色とりどりのパートナーシップの形を散りばめているように感じます。


優三(仲野太賀)は、お守りに遺した手紙にこんなことを書いていました。


「見た目とか甘い言葉を囁く相手に騙されちゃいけない。寅ちゃんと優未をスンとさせる相手はダメ。寅ちゃんと優未を縛る相手はダメ。寅ちゃんと優未の笑顔を奪う相手はダメ。寅ちゃんを心底愛せない相手はダメだ。でも、その人を前にして胸が高鳴って仕方ないのなら、その人が好きなら、今書いたことも僕もすべて忘れて、その人のもとに飛んでいってほしい。寅ちゃん、自分を信じて。そんな寅ちゃんを僕は信じる」

『虎に翼』多様なパートナーシップが示す「典型を作らない」強い意志。優三に象徴される“尊重”と”応援”こそ、このドラマの精神だ【横川良明の『虎に翼』隔週レビュー19•20週】_img0
©︎NHK


優三は、いつも寅子を尊重してくれた。寅子のあらゆる選択を応援してくれた。優三の精神は、そのまま『虎に翼』の精神です。誰も取りこぼさず、誰も差別せず、あらゆる人の権利を尊重し、決断を応援する。だから、寅子も一度は否定的だった高瀬と小野の友情結婚を応援することに決めた。

「何を言っても二人の人生の責任はとれません。何を言っても無責任なんだわ。だから、うん、好きにしなさい。私は、二人が選んだ決断を応援します」

僕もまたすべての人にそうありたい。同じ無責任なら、その人の力になってあげられる無責任でありたい。同じ人なんて一人もいない、同じ関係性なんてどこにもないからこそ、尊重と応援ができる人間でありたいと改めて決意したのでした。

 

NHK 連続テレビ小説『虎に翼』
出演:伊藤沙莉
石田ゆり子 岡部たかし 仲野太賀 森田望智 上川周作
土居志央梨 桜井ユキ 平岩 紙 ハ・ヨンス 岩田剛典 戸塚純貴
松山ケンイチ 小林 薫
作:吉田恵里香
音楽:森優太
主題歌「さよーならまたいつか!」米津玄師
語り:尾野真千子

【放送予定】
総合:毎週月曜〜金曜8:00〜8:15、(再放送)毎週月曜〜金曜12:45〜13:00
BSプレミアム:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜8:15〜9:30
BS4K:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30
※NHK+で1週間見逃し配信あり
 

文/横川良明
構成/山崎 恵
 
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