『サザエさん』(フジテレビ系)を観ていると、昭和の子育ては頼れる場所がたくさんあっていいなと思う瞬間があります。
現代は核家族が増え、ワンオペ育児をしている人が主ですが、『サザエさん』の時代は拡大家族で子育てをしている。お隣に住んでいる伊佐坂家や、裏のおじいちゃんとおばあちゃん、そして商店街の人々など、地域全体で子どもたちを見守っている感じ。もしも、サザエさんが病に倒れることがあっても、タラちゃんの面倒を見てくれる人はたくさんいます。子育てにおいて、“わたしが倒れたら終わる”という責任感を持つことも大事かもしれないけれど、“支えてくれる人がたくさんいるから大丈夫”と思える余裕もあった方がいいんじゃないかなと思うんです。
ただ、他人に頼るってむずかしい。血縁のある家族にだって、すべてを委ねることはできないのに、他人ならなおさらです。そんななか、『海のはじまり』(フジテレビ系)の水季(古川琴音)と、『西園寺さんは家事をしない』(TBS系)の楠見くん(松村北斗)は、“他人に頼る勇気を出した人たち”。
もちろん、2人もすぐに頼ることができたわけではありません。水季は、津野くん(池松壮亮)に「無理しないでね」と言われても「無理しなきゃ、子どももわたしも死んじゃうんで」とひとりですべてを抱え込み、楠見くんも「家族でもない人に頼るのはおかしい」と西園寺さん(松本若菜)の親切を真っ向から跳ね返していました。
楠見くんは、風邪を引いて娘から離れて眠ったとき、「解放された」と思ってしまっただけで、罪悪感を抱いてしまうような人です。でも、解放されることの何が悪いんだろう。ずっと神経をとがらせていなければ死んでしまう小さな子どもを守る責任をひとりで背負っていたら、疲弊してしまうのは当たり前。サザエさんも、タラちゃんを預けてマスオさんと2人でデートをしたり、母のフネとデパートで息抜きをしたりしていますよね。そんな感じで、どんどん解放する時間を作ってもいいんじゃないかって。それが、結果的に良き子育てにつながっていく気がするんです。だから、たとえ他人であっても、“助けるよ”と手を伸ばしてくれる人がいるのなら、水季や楠見くんのようにつかんでしまえばいい。
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