「人生はひとりで抱え込めば悲劇だが、人に語って笑わせれば喜劇だ」

そう語る岸田奈美さんのエッセイを原作にした連続ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』(NHK総合/以下『かぞかぞ』)が、現在放送中です。ベンチャー企業家だった父が急死し、母は突然車椅子ユーザーに。弟はダウン症で、祖母は物忘れの症状が……。これは、確実に「もうあかんわー!!」と言いたくなるような状況ですよね。

冒頭で、主人公の七実(河合優実)が、「家族の死、障害、不治の病。どれかひとつでもあれば、どこぞの映画監督が世界を泣かせてくれそうなもの。それ全部、うちの家に起きてますけど?」と言っているように、“お涙頂戴”に持っていくこともできたと思うんです。でも、『かぞかぞ』はちがう。次から次へと「悲しい」という言葉では説明ができない問題が起こっているのに、主人公の七実はとにかく明るいんですよね。だからこそ、観ていて勇気をもらえるんです。
 

 


個人的な話になってしまいますが、昨年『かぞかぞ』がBSで放送されていたとき、わたしは母の介護をしていました。介護って、メンタル的にすごくしんどいんですよね。目が離せないし、自分の時間がなくなる点では、子育てと同じかもしれません。でも、子育てはできることがどんどん増えていくので、未来に向かっている感覚があります。その一方で、介護はできることがだんだん減っていくにつれて、大切な親との別れが迫っているように感じて、苦しくなる。

「介護しんどい!」「でも、介護が終わるということは、母とお別れするということ」「どっちもしんどいから、逃げ場がない……」と悲観的になっていたとき、岸田さんのnoteやエッセイ、そしてドラマ『かぞかぞ』に救われました。もう無理と思うたびに、脳内に岸田さんを召喚させて、「もう無理」を「もうあかんわー!!」に変換する。どうせ、しんどいのなら、悲劇を喜劇に変えてしまえばいい。そう思うようになってから、だんだんと気持ちがラクになっていったんです。