うちにはハトじゃなくてネコがいますとか、どのレストランは美味しい、今日は何を食べたなど、なんてことない内容だった。だんだん食に共通の興味があることや、夫がソムリエやサービスの仕事にこだわりと誇りを持って働いていることなども話の端々から伝わってきて好感を持った。しかも、意外にも、あれこれ日常のことで文字の会話が途切れない。
メッセージのやりとりでこんなにスムーズに会話が弾むのだったら、会ったらもっと弾むかな、と徐々に思い始めた。そういう目でこの人を見てなかったけれど、もしかして、この力の抜けた、自然な感じで会話できる仲こそ、サステイナブルな関係なのでは、と。
ハト発生から、2週間ほど経ったころ。ふと、
「ベランダの子は巣立ちましたか。そろそろ幸運を運んできましたか?」と連絡してみた。返事が来た。
「うーん、そうですね……住吉さんとメールしてます」
その半年後、私たちは結婚していた。
最初から婚活という目的意識の塊にならず、ありのままの、恰好をつけない、友達の延長線のような肩の力の抜けた私でいたら、その私を良しとしてくれる友達のような人が現れた。その価値に、私も気づくことができた。
今ならばわかる。人は自分の鏡である。人間関係を変えたいと思うならば、まず自分自身が大きく変わる必要があるのだ。自分を棚に上げず、棚おろし。特に「自分の思い込み」という呪縛から抜け出せるかどうかは大きい。何歳になっても。
しかし、これでハイめでたしめでたし、ではない。夫婦というのは、お互い努力して作る、それぞれが唯一無二の関係だからだ。それはまた次回。
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