性的マイノリティが出ることに理由なんていらない
 

と、大上段に構えたような言い方になってしまいましたが、本音を言うと、そんな崇高なテーマや社会的意義がなくなっていいじゃない、と思っています。なぜ朝ドラで性的マイノリティを出すのかと言われたら、「理由がないと出ちゃいけないの?」が僕のアンサーです。

朝ドラに限らず、現状、多くの物語で性的マイノリティが登場する際、何かしらのテーマや意味を持たされがちです。でも、実際のところ、当事者はそんな何かしらの社会的意義を背負って性的マイノリティをやっているわけではないでしょう。ただ、そうだったからそうなだけ。

物語に異性愛者を出すことに意味や理由が求められないように、物語に同性愛者を出すことに意味や理由を求める必要はないのです。ただ、そこにいる人をそのまま描く。そして、それを観た人もそのまま受け止める。そうできるのが理想だなと思っています。でもそうなるためには、どちらか一方が不利益を被っている社会のシステムをまずは変えていかないといけない。
 

 


ちょっと脱線しますが、最近、『MIU404』を見返していて、ある台詞が改めて胸に刺さりました。それは、女性初の1機捜隊長となった桔梗(麻生久美子)が、女性を迫害する男社会に向けて言ったこの台詞です。

「何を恐れているんだろうね。ただここにいて、働いているだけなのに」

警察組織という厳然たる男社会で、女性はマイノリティ。そして、マイノリティというだけで自分たちが築き上げたルールや社会を脅かす異分子と見なされる。この「女性」という立場はあらゆるマイノリティに置き換えてもいいかもしれません。

マイノリティは、マジョリティの持っている権利を奪ったり、脅威を与えようとしているわけではなく、ただマジョリティに認められているものを同じように自分たちにも認めてもらいたいだけ。

ただここにいて、自分の尊厳を守るために生きている。すべてのマイノリティが日陰に追いやられることなく、顔を上げて生きていける社会を切に願っています。

『虎に翼』朝ドラが同性婚や夫婦別姓を描く意味。マイノリティは社会的意義のために存在しているわけじゃない【横川良明の『虎に翼』隔週レビュー21•22週】_img0
©︎NHK
 

NHK 連続テレビ小説『虎に翼』
出演:伊藤沙莉
石田ゆり子 岡部たかし 仲野太賀 森田望智 上川周作
土居志央梨 桜井ユキ 平岩 紙 ハ・ヨンス 岩田剛典 戸塚純貴
松山ケンイチ 小林 薫
作:吉田恵里香
音楽:森優太
主題歌「さよーならまたいつか!」米津玄師
語り:尾野真千子

【放送予定】
総合:毎週月曜〜金曜8:00〜8:15、(再放送)毎週月曜〜金曜12:45〜13:00
BSプレミアム:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜8:15〜9:30
BS4K:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30
※NHK+で1週間見逃し配信あり
 

文/横川良明
構成/山崎 恵
 
『虎に翼』朝ドラが同性婚や夫婦別姓を描く意味。マイノリティは社会的意義のために存在しているわけじゃない【横川良明の『虎に翼』隔週レビュー21•22週】_img1
 

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